循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

50年代のすでに廃れた治療法に、もう一度光が当たるのか?(解説:野間重孝氏)

冠状静脈洞減圧術(Coronary Sinus Decompression:CSD)という名称で呼ばれる処置は、奇しくも1950年代のほぼ同時期に、まったく異なった2つの分野で開発された。1つはこの論文の研究対象となっている冠動脈疾患治療目的のCSDであり、もう1つは先天性心疾患の治療目的で開発されたCSDである。混乱を避ける意味でも、まず後者について簡単に解説した後、本題に入りたいと思う。

心電図所見から夜間の自殺企図を予測できる?

 精神疾患と心電図所見の関連については多くの研究が行われている。新たな研究として、自殺企図歴のある日本人の精神疾患患者を対象に、夜間の自殺企図と心電図の波形との関連が検討された。その結果、早期再分極を示す心電図により、夜間の自殺企図を予測できる可能性のあることが示された。東京慈恵会医科大学附属柏病院精神神経科の亀山洋氏らによる研究結果であり、「Neuropsychopharmacology Reports」に3月17日掲載された。  早期再分極パターン(early repolarization pattern;ERP)は、心電図におけるQRS-ST接合部(J点)の上昇(スラーやノッチと呼ばれる波形)を特徴とする。ERPは男性に多く、健常人にも見られるが、精神疾患との関連が報告されており、自殺企図などの衝動性と関連する可能性も示唆されている。自殺行動は夜間の時間帯に多いことが知られているため、その危険性を事前に予測することが重要となる。

少し高い血圧でも脳・心血管疾患のリスクは2倍/横浜市大

 わが国で高血圧は、脳・心血管疾患の死因の第2位であり、働き盛りの健康リスクともなっている。この一方で、若年から中年における血圧分類と心血管疾患(CVD)イベントとの関連に関するエビデンスは乏しかった。そこで、桑原 恵介氏(横浜市立大学 医学部公衆衛生学・大学院データサイエンス研究科)らの研究グループは、関東・東海地方に本社のある企業など10数社による職域多施設共同研究“Japan Epidemiology Collaboration on Occupational Health Study”(J-ECOHスタディ)に参加した高血圧の治療中ではない就労者8万1,876例を9年間追跡調査した。その結果、「少し高い血圧」の段階から脳・心血管疾患の発症リスクが高まることが確認された。この結果は、Hypertension Research誌オンライン版2024年4月8日に掲載された。

取り過ぎた塩分を出す「排塩コントロール」と具体的な指導方法

 10年ほど前に話題になったDASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食。それが今、塩分を排出させる食事として再注目されているようだ。DASH食とは、飽和脂肪とコレステロールの少ない果物、野菜、ナッツ・豆類、低脂肪乳製品、全粒穀類を豊富に摂取することで降圧効果が期待される“塩分の排出に重点を置いた食事療法”で、米国・国立衛生研究所(NIH)などが考案したのを契機に、国内の高血圧治療ガイドライン2019年版でも推奨されている。また、この食事療法に減塩を組み合わせたものはDASH-sodium食と呼ばれ、これまでに十分なエビデンスが報告されている。

ASPECTS 0~5の広範囲脳梗塞にも血管内治療は有効か?/NEJM

 ベースラインでの梗塞サイズの上限を設けずに試験登録した急性期広範囲脳梗塞患者において、血栓除去術+内科的治療は内科的治療単独と比べて、良好な機能的アウトカムをもたらし、死亡率も低下したことが示された。ただし症候性脳出血の発生率は高かった。フランス・Hopital Gui de ChauliacのVincent Costalat氏らLASTE Trial Investigatorsが、多施設共同前向き非盲検無作為化試験「LASTE試験」の結果を報告した。梗塞サイズの上限を設けない急性期広範囲脳梗塞患者における血栓除去術の使用については、これまで十分に検証されていなかった。NEJM誌2024年5月9日号掲載の報告。

CABGで女性の死亡率が男性よりも高い理由とは?

 男性よりも女性の方が冠動脈バイパス術(CABG)の生存率が低いことは以前から知られていたが、その理由は不明だった。こうした中、米ワイル・コーネル・メディスン心臓胸部外科分野教授のMario Gaudino氏らが、その説明となり得る研究結果を報告した。その研究によると、女性は男性よりも手術中に貧血に陥りやすく、それが死亡リスクの上昇につながっている可能性が示されたという。この研究結果の詳細は、「Journal of the American College of Cardiology」に3月5日掲載された。研究グループは、「この結果を受け、CABGを受ける女性患者の生存率を高める安全策に拍車がかかるはずだ」と述べている。

ChatGPTは高齢患者のポリファーマシー対策に有用

 人工知能(AI)は、高齢者の多剤併用(ポリファーマシー)対策に役立つ可能性のあることが、新たな研究で示唆された。OpenAI社の大規模言語モデル(LLM)であるChatGPTに高齢者の架空の投薬リストを評価させたところ、一貫して不必要な可能性のある薬の使用の中止を推奨したという。米ハーバード大学医学大学院のArya Rao氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Medical Systems」に4月18日掲載された。  Rao氏らによると、高齢者の40%以上が5種類以上の薬を処方されており、それが薬物相互作用のリスクを高めているという。このリスクは、不要な薬の処方をやめることで軽減されるが、そのための意思決定プロセスは複雑であり、時間もかかる。そのため、特に人手不足に直面していることの多いプライマリケア従事者をサポートする、効果的なポリファーマシー管理ツールが必要とされている。

看護師主導の多職種連携により高齢心不全患者の死亡率が低下

 高齢化により心不全の有病率は上昇し、マルチモビディティ(多疾患併存)の状態にある患者が増えている。このような患者を対象に、看護師が主導し多職種介入を行ったところ、死亡率が有意に低下したという結果が示された。これは大阪大学大学院医学系研究科老年看護学教室の竹屋泰氏、齊前裕一郎氏らによる研究結果であり、「American Heart Journal Plus: Cardiology Research and Practice」に1月20日掲載された。  異なる専門分野を有する医療従事者が関与する多職種連携は、患者に関わる職種の数が多い(multidisciplinary intervention)だけでは不十分で、多職種が互いに連携して協働する(interprofessional work)必要がある。看護師は、患者の疾患と生活の両方に携わり、24時間体制でケアを提供し、他の職種との関わりも多いことから、看護師主導による多職種連携の有効性についてはこれまでにも研究されている。しかし、複数の併存疾患を有し、複雑な管理を要する患者に対する効果は明らかになっていなかった。

STEMI合併心原性ショック、循環補助用心内留置型ポンプカテーテルは有用か?/NEJM

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)で心原性ショックを合併した患者の治療において、標準治療に加え循環補助用心内留置型ポンプカテーテルImpella CP(Abiomed製)を使用することにより、標準治療単独と比較して180日全死因死亡リスクは低下したが、有害事象の複合の発現率は増加した。デンマーク・コペンハーゲン大学病院RigshospitaletのJacob E. Moller氏らDanGer Shock Investigatorsが、デンマーク、ドイツおよび英国の計14施設で実施された無作為化比較試験「Danish-German Cardiogenic Shock trial:DanGer Shock試験」の結果を報告した。心原性ショックを呈したSTEMI患者に対する、微小軸流ポンプによる一時的な機械的循環補助の有用性は依然として不明であった。NEJM誌2024年4月18日号掲載の報告。

術後の静脈血栓塞栓リスク、最も高いがんは?

 がん手術後の静脈血栓塞栓のリスク増加を、がん種別に評価した研究結果が発表された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のJohan Bjorklund氏らによる本研究結果は、JAMA Network Open誌2024年2月2日号に掲載された。  本試験は1998~2016年のスウェーデンの全人口データを用いた後ろ向きコホート研究であった。膀胱がん、乳がん、大腸がん、婦人科がん、腎臓・上部尿路上皮がん、肺がん、前立腺がん、胃・食道がんの8種のがんで手術を受けた全患者を、非がんの一般集団と1対10の割合でマッチさせた。データは2023年2月13日~12月5日に解析された。