医療一般

AGA治療薬ミノキシジル、経口vs.外用

 男性型脱毛症(AGA)治療薬ミノキシジルについて、経口ミノキシジル5mg(1日1回)は外用ミノキシジル5%(1日2回)と比較し、24週間の治療において優越性を示さなかったことが、無作為化比較試験で示された。低用量経口ミノキシジルへの関心が高まっているが、これまでその有効性は比較試験で検証されていなかった。本研究結果は、ブラジル・サンパウロ大学のMariana Alvares Penha氏らによってJAMA Dermatology誌オンライン版2024年4月10日号で報告された。  研究グループは、ブラジルの専門クリニック単施設において、経口ミノキシジル5mg(1日1回)の有効性および安全性を外用ミノキシジル5%(1日2回)との比較で検証する二重盲検無作為化比較試験を行った。

日本のガイドラインで推奨される睡眠薬、最も有用なのは?

 不眠症のガイドラインでは、いくつかの睡眠薬が推奨されているが、臨床現場において最も有用な睡眠薬は明らかとなっていない。秋田大学の竹島 正浩氏らは、不眠症に対する初回治療薬としてガイドラインで推奨される睡眠薬による単剤療法の失敗リスクが低い薬剤、単剤療法後の中止率の高い薬剤を特定するため、本研究を実施した。JAMA Network Open誌2024年4月1日号の報告。  2005年4月~2021年3月の日本医療データセンターレセプトデータベースのデータを用いて、レトロスペクティブ観察コホート研究を実施した。対象患者は、不眠症に対する初回治療薬としてガイドラインで推奨される睡眠薬(スボレキサント、ラメルテオン、エスゾピクロン、ゾルピデム、トリアゾラム)による単剤療法を行った成人患者。データ分析は、2022年12月24日~2023年9月26日に実施した。主要アウトカムは、単剤療法の失敗とし、ガイドラインで推奨される睡眠薬による単剤療法を開始してから6ヵ月以内に睡眠薬の変更または追加を行った場合と定義した。副次的アウトカムは、単剤療法の中止とし、単剤療法が失敗しなかった後、6ヵ月以内に2ヵ月連続で睡眠薬を処方しなかった場合と定義した。単剤療法の失敗および中止は、それぞれCox比例ハザードモデル、ロジスティック回帰モデルを用いて比較した。

IBSの治療、食事法の効果が薬を上回る?

 腹痛などの過敏性腸症候群(IBS)の症状を軽減する最善の治療法は適切な食事法であることを示唆する結果が、ヨーテボリ大学サールグレンスカアカデミー(スウェーデン)のSanna Nybacka氏らが実施した臨床試験で示された。同試験では、IBSの症状に対する治療法として2種類の食事法の方が標準的な薬物治療よりも優れていることが示された。詳細は、「The Lancet Gastroenterology and Hepatology」に4月18日掲載された。  IBSは、消化器疾患の中で最も高頻度に生じる上に、治りにくい疾患の一つだ。米国人のIBSの有病率は約6%で、患者数は男性よりも女性の方が多い。IBSの症状は、腹痛、腹部膨満感、下痢、便秘などの無視しがたいもので、死に至る場合もある。IBSに対しては、食事の改善のほか、便秘薬や下痢止め薬、特定の抗うつ薬、腸管内の水分の分泌を促し腸の動きを活発にする作用があるリナクロチドやルビプロストンなどの薬物による治療が行われる。

免疫不全患者のCOVID-19長期罹患がウイルス変異の温床に

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に1年半にわたって罹患していた免疫不全の男性患者が、ウイルスの新たな変異の温床となっていたとする研究結果が報告された。さらに悪いことに、確認された変異のいくつかは、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質に生じていた。これは、ウイルスが現行のワクチンを回避するために進化していることを意味する。アムステルダム大学医療センター(オランダ)のMagda Vergouwe氏らによるこの研究の詳細は、欧州臨床微生物・感染症学会議(ECCMID 2024、4月27〜30日、スペイン・バルセロナ)で発表された。

CABGで女性の死亡率が男性よりも高い理由とは?

 男性よりも女性の方が冠動脈バイパス術(CABG)の生存率が低いことは以前から知られていたが、その理由は不明だった。こうした中、米ワイル・コーネル・メディスン心臓胸部外科分野教授のMario Gaudino氏らが、その説明となり得る研究結果を報告した。その研究によると、女性は男性よりも手術中に貧血に陥りやすく、それが死亡リスクの上昇につながっている可能性が示されたという。この研究結果の詳細は、「Journal of the American College of Cardiology」に3月5日掲載された。研究グループは、「この結果を受け、CABGを受ける女性患者の生存率を高める安全策に拍車がかかるはずだ」と述べている。

日本人における果物や野菜の摂取と認知症リスク~JPHC研究

 果物や野菜には、ビタミンC、α-カロテン、β-カロテンなどの抗酸化ビタミンが豊富に含まれている。果物や野菜の摂取が認知症リスクに及ぼす影響を評価したプロスペクティブ観察研究はほとんどなく、結果には一貫性が認められていない。筑波大学の岸田 里恵氏らは、日本人における果物や野菜の摂取と認知症リスクとの関連を調査した。The Journal of Nutrition誌オンライン版2024年4月8日号の報告。  2000~03年(ベースライン時)に50~79歳の4万2,643例を対象としたJPHCプロスペクティブ研究(Japan Public Health Center-based Prospective Study)においてフォローアップ調査を実施した。食事による果物および野菜の摂取量、関連する抗酸化ビタミン(α-カロテン、β-カロテン、ビタミンC)の摂取量は、食事摂取頻度調査票(FFQ)を用いて収集した。認知障害の診断は、2006~16年の介護保険制度における認知症に係る日常生活障害の状況に基づいて行った。認知障害に関するハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)は、潜在的な交絡因子で調整した後、エリア層別Cox比例ハザードモデルを用いて推定した。摂取量の最低四分位と比較した最高四分位の多変量HRを算出した。

ChatGPTは高齢患者のポリファーマシー対策に有用

 人工知能(AI)は、高齢者の多剤併用(ポリファーマシー)対策に役立つ可能性のあることが、新たな研究で示唆された。OpenAI社の大規模言語モデル(LLM)であるChatGPTに高齢者の架空の投薬リストを評価させたところ、一貫して不必要な可能性のある薬の使用の中止を推奨したという。米ハーバード大学医学大学院のArya Rao氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Medical Systems」に4月18日掲載された。  Rao氏らによると、高齢者の40%以上が5種類以上の薬を処方されており、それが薬物相互作用のリスクを高めているという。このリスクは、不要な薬の処方をやめることで軽減されるが、そのための意思決定プロセスは複雑であり、時間もかかる。そのため、特に人手不足に直面していることの多いプライマリケア従事者をサポートする、効果的なポリファーマシー管理ツールが必要とされている。

小児でCOVID-19が重症化しにくい理由とは?

 小児が高齢者と比べて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が軽症で済みやすい理由は鼻の中の細胞にあることが、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)グレート・オーモンド・ストリート小児健康研究所のClaire Smith氏らの研究で示唆された。12歳未満の小児では、鼻腔内の上皮細胞(鼻粘膜上皮細胞)が新型コロナウイルスに対して迅速に免疫反応を示すのに対し、高齢者ではそのような迅速な免疫反応は起こりにくいことが実験で確認されたという。この研究結果は、「Nature Microbiology」に4月15日掲載された。

経口ワクチンが抗菌薬に代わる尿路感染症の治療法に?

 新たに開発された経口投与型のワクチンが、尿路感染症(UTI)を繰り返す「再発性UTI」の患者にとって抗菌薬に代わる治療法となる可能性のあることが、英ロイヤル・バークシャーNHS財団トラストの泌尿器科専門医であるBob Yang氏らの研究で示唆された。同氏らによると、スプレーを使って舌の下にワクチンを投与した再発性UTI患者の半数以上(54%)は、その後9年にわたってUTIを再発することがなく、また目立った副作用も認められなかったという。この研究結果は、欧州泌尿器科学会(EAU 2024、4月5~8日、フランス・パリ)で発表された。

看護師主導の多職種連携により高齢心不全患者の死亡率が低下

 高齢化により心不全の有病率は上昇し、マルチモビディティ(多疾患併存)の状態にある患者が増えている。このような患者を対象に、看護師が主導し多職種介入を行ったところ、死亡率が有意に低下したという結果が示された。これは大阪大学大学院医学系研究科老年看護学教室の竹屋泰氏、齊前裕一郎氏らによる研究結果であり、「American Heart Journal Plus: Cardiology Research and Practice」に1月20日掲載された。  異なる専門分野を有する医療従事者が関与する多職種連携は、患者に関わる職種の数が多い(multidisciplinary intervention)だけでは不十分で、多職種が互いに連携して協働する(interprofessional work)必要がある。看護師は、患者の疾患と生活の両方に携わり、24時間体制でケアを提供し、他の職種との関わりも多いことから、看護師主導による多職種連携の有効性についてはこれまでにも研究されている。しかし、複数の併存疾患を有し、複雑な管理を要する患者に対する効果は明らかになっていなかった。

双極性障害や統合失調症における向精神薬治療関連の重篤な薬剤性有害事象

 気分安定薬や向精神薬は、重篤な薬剤性有害事象(ADE)を引き起こす可能性がある。しかし、その発生率は明らかではない。スウェーデン・ウメオ大学のPetra Truedson氏らは、双極性障害または統合失調感情障害の患者における重篤なADEの発生率、リチウムの影響、原因を明らかにする目的で本研究を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2024年4月3日号の報告。  本研究はLiSIE(Lithium-Study into Effects and Side Effects)レトロスペクティブコホート研究の一部として行われた。2001~17年、スウェーデン・ノールボッテン地方で双極性障害または統合失調感情障害と診断された患者を対象に、重大な結果をもたらした、麻酔後ケアユニットまたは集中治療を要した、向精神薬による重篤なADEをスクリーニングした。重篤なADEの発生率は、1,000人年当たりで算出した。

マイナ保険証が患者を救う!?使ってもらうための実例紹介/日本健康会議

 昨年の7月にCareNet.comではマイナンバーカードの健康保険証利用の普及に先駆け、医師のマイナ保険証の取得率や自施設のカードリーダー設置率を調査した。その結果、「マイナンバーカードと保険証の連携手続きが済んでいる」と回答した医師は約6割にのぼり、カードリーダー設置率も6割を超えていた。ところが、国民のマイナ保険証利用率を直近の令和6年3月時点のデータで見ると、病院12.59%、歯科診療所10.27%、医科診療所5.22%、薬局4.17%と、今年12月に紙の保険証が廃止される状況下としてはなんとも心もとない。

気候変動により脳卒中による死者数が増加か

 気候変動による気象の激しい変化は、脳卒中による死者数の増加につながっているようだ。新たな研究で、2019年には、厳寒をもたらす寒冷前線や灼熱の熱波が年間50万人以上の脳卒中による死亡に関係していた可能性のあることが示された。中南大学湘雅医院(中国)のQuan Cheng氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に4月10日掲載された。  Cheng氏は、「近年の劇的な気温の変動は、人間の健康に影響を及ぼし、広範な懸念を引き起こしている」と述べ、「われわれの研究では、このような気温の変動は世界中で脳卒中の負担を増加させ、特に高齢者や医療格差の大きい地域においてその影響が強い可能性が示唆された」と同誌のニュースリリースの中で述べている。

コーヒーが早食いによるメタボリックシンドロームを予防?

 早食いは肥満につながるとされ、健康のためにゆっくり食べることが推奨される。そんな中、新たに日本人を対象として行われた研究によると、1日1杯のコーヒーを飲むことで、早食いによるメタボリックシンドロームを予防できる可能性があるという。これは京都府立医科大学大学院医学研究科地域保健医療疫学の小山晃英氏らによる研究結果であり、「Healthcare」に3月7日掲載された。  メタボリックシンドロームは死亡やさまざまな疾患のリスクを上昇させる。食事のスピードとメタボリックシンドロームの関連が報告されているが、一度身に付いた習慣を変えるのは簡単なことではない。著者らは今回、カフェインやポリフェノール(クロロゲン酸)を含み、さまざまな健康効果が報告されているコーヒーに着目して、コーヒー摂取量、食事のスピード、メタボリックシンドロームの関連について調べた。

コロナワクチンに不安のあるがん患者の相談相手は?

 外来で化学療法を受けるがん患者を対象に、新型コロナワクチンに関して不安を感じることの内容やその相談相手などが調査された。その結果、相談相手としてプライマリケア医が最も多いことが明らかとなった。研究グループは、薬剤師が介入できる可能性も示唆されたとしている。これは順天堂大学医学部附属順天堂医院薬剤部の畦地拓哉氏らによる研究であり、「Journal of Pharmaceutical Health Care and Sciences」に3月4日掲載された。  新型コロナワクチンは日本で2021年2月に承認され、がん患者において接種が推奨されている。しかし、がん患者のワクチン接種状況や副反応に焦点を当てた研究はほとんどない。患者はがん治療への影響も含めて多くの不安を抱えるため、医療職の関与が重要となる。

術後の静脈血栓塞栓リスク、最も高いがんは?

 がん手術後の静脈血栓塞栓のリスク増加を、がん種別に評価した研究結果が発表された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のJohan Bjorklund氏らによる本研究結果は、JAMA Network Open誌2024年2月2日号に掲載された。  本試験は1998~2016年のスウェーデンの全人口データを用いた後ろ向きコホート研究であった。膀胱がん、乳がん、大腸がん、婦人科がん、腎臓・上部尿路上皮がん、肺がん、前立腺がん、胃・食道がんの8種のがんで手術を受けた全患者を、非がんの一般集団と1対10の割合でマッチさせた。データは2023年2月13日~12月5日に解析された。

統合失調症患者における入院中の抗精神病薬切り替えと再入院リスク

 米国・コロンビア大学のYihe Nina Gao氏らは、統合失調症入院患者における抗精神病薬の切り替えパターンを調査し、抗精神病薬の切り替えと再入院リスクとの関連を評価した。Schizophrenia Research誌2024年5月号の報告。  対象は、2017~18年にニューヨーク州メディケイド請求より抽出した入院前後の44日間(1ヵ月+猶予期間14日間)で抗精神病薬を処方された統合失調症または統合失調感情障害の入院患者3,295例。初回入院前後に抗精神病薬の継続または変更を行った患者を特定した。患者の特徴に合わせ調整した後、抗精神病薬継続群と切り替え群との比較を行った。

降圧薬を開始・追加した高齢者は〇〇に注意?

 高齢者は転倒リスクの1つである起立性低血圧が生じやすい。そこで、米国・Rutgers UniversityのChintan V. Dave氏らの研究チームは、降圧薬が高齢者の骨折リスクへ及ぼす影響を検討した。その結果、降圧薬の開始・追加は骨折や転倒、失神のリスクを上昇させた。本研究結果は、JAMA Internal Medicine誌オンライン版2024年4月22日号で報告された。  研究チームは、2006~19年に長期介護施設へ入所した米国の退役軍人2万9,648人を対象に、target trial emulationの手法を用いた後ろ向きコホート研究を実施した。50個以上の共変量について1:4の割合で傾向スコアマッチングを行い、降圧薬の開始・追加後30日以内の骨折の発生リスクを評価した。認知症の有無、収縮期血圧(140mmHg以上/未満)、拡張期血圧(80mmHg以上/未満)、降圧薬の使用歴、年齢(80歳以上/未満)別のサブグループ解析も実施した。さらに、入院または救急受診を要する重度の転倒、失神のリスクも評価した。なお、降圧薬の開始・追加は、過去4週間以内に降圧薬を使用していない患者の降圧薬の使用、または過去4週間に使用している降圧薬とは別のクラスの降圧薬の追加と定義した。

いくつかの腸内細菌はコレステロールを低下させる

 腸内細菌叢の組成が、肥満や2型糖尿病、炎症性腸疾患を含む、さまざまな疾患のリスクと関連していることが明らかになってきているが、新たにコレステロール値の低下に関連している可能性のある腸内細菌が見つかった。この細菌は、心血管疾患のリスク低減というメリットをもたらす可能性もあるという。米ブロード研究所のRamnik Xavier氏らの研究によるもので、詳細は「Cell」に4月2日掲載された。論文の上席著者である同氏は、「われわれの発見は、腸内細菌叢の組成をわずかに変えることによって、心血管の健康を改善させるというアプローチのスタートラインと言えるのではないか」と述べている。

公園や森林は幼児のメンタルヘルスを育む

 緑地が近くにある環境で育った子どもは、たとえそれが公園や広い裏庭であっても、2〜5歳時に不安や抑うつといった感情的な問題を抱える可能性の低いことが、新たな研究で明らかになった。米国立衛生研究所(NIH)の資金提供を受けて米ノースカロライナ大学フランク・ポーター・グラハム児童発達研究所のNissa Towe-Goodman氏らが実施したこの研究結果は、「JAMA Network Open」に4月10日掲載された。  Towe-Goodman氏は、「われわれの研究結果は、自然の中に身を置くことが子どもにとって良いことを示す既存のエビデンスを裏付けるものだ」と述べる。また、「就学前の子どもが自然とふれあうことの重要性を示唆する研究結果でもある」と付言している。