救急科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

コロナ禍以降、自宅での脳卒中・心血管死が急増/日本内科学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行期において、自宅や介護施設での脳卒中や心筋梗塞などの循環器疾患による死亡が増加し、2023年末時点でも循環器疾患による死亡のトレンドが減少していないことが、白十字会白十字病院 脳血管内科の入江 克実氏らの研究グループによる解析で明らかになった。本研究は、4月12~14日に開催された第121回日本内科学会総会・講演会の一般演題プレナリーセッションにて、入江氏が発表した。  入江氏によると、国内での総死亡数の推移データにおいて、2023年末時点でもCOVID-19流行前と比べて超過死亡は増加しているという。

近くにあるAEDが心停止者に使われることはまれ

 この数年で、心停止者の命を救うための自動体外式除細動器(AED)を公共施設に設置する動きが大きく広がっているが、残念ながら、実際にAEDが使用される機会は少ないようだ。米ミズーリ大学カンザスシティ校のMirza Khan氏らによる研究で、病院の外の環境で起こった心停止(院外心停止)約1,800件のうち、AEDが使用されたのは13件のみであったことが示された。この研究結果は、米国心臓病学会(ACC 24、4月6〜8日、米アトランタ)で発表予定。  院外心停止症例の多くで近くにAEDが設置されていたが、バイスタンダー(心停止者の近くに居合わせた人)がそれに気付かなかった可能性がある。Khan氏は、「公共の場でのAEDの普及は、人々が適切なタイミングと方法でそれらを使用できるようにするためには重要だ。ただし、使用可能なAEDが近くにあることを人々が知る必要がある。適切な場所にAEDを設置するだけでは不十分なのだ」と指摘する。

肺炎診療GL改訂~NHCAPとHAPを再び分け、ウイルス性肺炎を追加/日本呼吸器学会

 2024年4月に『成人肺炎診療ガイドライン2024』が発刊された。2017年版では、肺炎のカテゴリー分類を「市中肺炎(CAP)」と「院内肺炎(HAP)/医療介護関連肺炎(NHCAP)」の2つに分類したが、今回の改訂では、再び「CAP」「NHCAP」「HAP」の3つに分類された。その背景としては、NHCAPとHAPは耐性菌のリスク因子が異なるため、NHCAPとHAPを1群にすると同じエンピリック治療が推奨され、NHCAPに不要な広域抗菌治療が行われやすくなることが挙げられた。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を経て、ウイルス性肺炎の項目が設定された。第64回日本呼吸器学会学術講演会において、本ガイドライン関するセッションが開催され、進藤 有一郎氏(名古屋大学医学部附属病院 呼吸器内科)がNHCAPとHAPの診断・治療のポイントや薬剤耐性(AMR)対策の取り組みについて解説した。また、ウイルス性肺炎に関して宮下 修行氏(関西医科大学 内科学第一講座 呼吸器感染症・アレルギー科)が解説した。

CPRはいつまで続けるべきか? In-Hospital CPA レジストリからの報告(解説:香坂俊氏)

レジストリデータとは臨床的なデータベースのうちで「特定の手技・手術や疾患イベント[診断確定や入院等]を起点として収集されるもの」と自分は考えていますが、本研究はこの特性をフルに活かした形で、心肺蘇生(CPR)に関する重要な情報の提供を行っています。研究の内容を非常に短く要約すると、「CPR開始から32分が経過すると神経学的に予後が良好な退院率は1%未満となり、39分が経過すると生存退院率そのものが1%未満となる」ということになりますが、この研究の長所としては、

プライマリケア提供者の不足は緊急手術の増加を招く

 プライマリケア医やナース・プラクティショナー(医師の指示なしで一定の治療や治療が可能な看護師)が不足している地域に住む米国人は、緊急手術が必要になったり合併症を発症したりするリスクの高いことが、新たな研究で明らかになった。こうした人では、退院後に再入院するリスクが高いことも示された。米ミシガン大学外科学分野のSara Schaefer氏らによる研究で、詳細は「Health Affairs」3月号に掲載された。  Schaefer氏は、「潜在的な問題を特定し、画像診断や手術のために患者を専門病院などへ紹介するプライマリケア提供者の役割は、迅速に対処すべき問題が緊急事態に陥るのを防ぐ上で大きな違いを生む可能性がある」とミシガン大学のニュースリリースの中で述べている。

初診で死亡を確認、死亡診断書を書くための条件を明記-厚労省「死亡診断書記入マニュアル」

 厚生労働省は、毎年策定している「死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」の令和6年度版を公開した。主な改訂点として、生前に診療を担当していなかった医師が死亡診断書を記載する場合の条件が明記された。また、死亡診断書および死体検案書の取り扱いに関するQ&Aもホームページに公開されている。  今回の改訂により、「別にかかりつけ医がいる患者が心肺機能停止で病院に搬送され、初診で死亡を確認したとき」や「連携する別の医師が訪問診療を行っていた患者が死亡し、死後診察を行ったとき」など、患者の生前に診療を担当していなかった医師であっても、以下の3条件をすべて満たす場合には、死亡診断書を交付できることが新たに明記された。

ビデオ喉頭鏡、手術室での気管内挿管の試行回数を改善/JAMA

 外科的処置時の全身麻酔で気管内挿管を要した成人患者において、直接喉頭鏡と比較してhyperangulatedブレードを用いたビデオ喉頭鏡は、気管内挿管の達成に必要な試行回数を減少させ、挿管失敗のリスクも低いことが、米国・クリーブランドクリニックのKurt Ruetzler氏らが実施した検討で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年3月18日号で報告された。  本研究は、米国の単一施設(クリーブランドクリニック)で実施したクラスター無作為化多重クロスオーバー試験であり、2021年3月~2022年12月の期間に参加者を登録した(研究助成はクリーブランドクリニックの支援のみ)。

院外心停止患者への市民による心肺蘇生、AED使用で生存が2倍以上に/日本循環器学会

 院外心停止(OHCA)患者の予後を改善するためには、市民による質の高い心肺蘇生法(CPR)と自動体外式除細動器(AED)の即時使用率をさらに高める必要がある。総務省消防庁は、1994年に市民を対象としたCPRの認定講習会を全国で開始し、2019年には受講者が年間約200万人に及び、認定者数は増加傾向にある。しかし、市民のCPR普及率やOHCA患者の生存率に及ぼす影響については十分に検討されていなかった。そのため、虎の門病院の山口 徹雄氏らの研究グループは、市民介入によるCPRと、患者の1ヵ月後の転帰との関連を評価した。本結果は、3月8~10日に開催された第88回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies 1にて、山口氏が発表した。なお本研究はResuscitation誌2024年2月号に掲載された。

能登半島地震、医療の復旧支援を厚労大臣に要請/日医

 日本医師会会長の松本 吉郎氏が、2024年3月13日の定例記者会見で、能登半島地震に対する「地域医療、地域包括ケアシステムの復旧支援に関する要請書」を厚生労働大臣の武見 敬三氏に3月8日に直接提出し、長期的な財政支援を要請したことを報告した。  石川県を中心として多数の病院、診療所、介護施設が深刻な被害を受け、今なお本格復旧には至っていない。そこで、大臣との会談で、(1)災害復旧費補助金などによる支援、(2)被災地の医療・介護従事者の確保、(3)他省庁との連携、の3点について格別の配慮を要請した。補助にあたっては被災医療機関が公的か民間かを問わず、事業者負担が極力最小限に抑えられるように求めた。

薬剤推奨不要を示す臨床試験(解説:後藤信哉氏)

欧米人は各種疾病、合併症のリスク層別化がうまい。抗凝固薬は確実に重篤な出血合併症リスクを増加させるので、メリットの明確な症例に限局して使用することには価値がある。私は、本研究のThrombosis Risk Prediction for Patients with Cast Immobilisation (TRiP)スコアを知らなかった。私同様知らないヒトはhttps://doi.org/10.1016/j.eclinm.2020.100270を読むとよい。臨床的に比較的簡便に血栓リスクの層別化が可能である。本研究では、急性期を過ぎたのちに、low risk群(TRiP(cast)スコア<7)には抗凝固薬療法を施行せず、high risk群に抗凝固薬療法を施行した。