感染症内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

CPOE導入で、尿路感染症入院への広域抗菌薬の使用が減少/JAMA

 尿路感染症(UTI)で入院した非重症の成人患者では、通常の抗菌薬適正使用支援と比較して、多剤耐性菌(MDRO)のリスクが低い患者に対して標準スペクトルの抗菌薬をリアルタイムで推奨するオーダーエントリーシステム(computerized provider order entry:CPOEバンドル)は、在院日数やICU入室までの日数に影響を及ぼさずに、広域スペクトル抗菌薬の経験的治療を有意に減少させることが、米国・カリフォルニア大学アーバイン校のShruti K. Gohil氏らが実施した「INSPIRE UTI試験」で示された。JAMA誌オンライン版2024年4月19日号掲載の報告。

コロナワクチンに不安のあるがん患者の相談相手は?

 外来で化学療法を受けるがん患者を対象に、新型コロナワクチンに関して不安を感じることの内容やその相談相手などが調査された。その結果、相談相手としてプライマリケア医が最も多いことが明らかとなった。研究グループは、薬剤師が介入できる可能性も示唆されたとしている。これは順天堂大学医学部附属順天堂医院薬剤部の畦地拓哉氏らによる研究であり、「Journal of Pharmaceutical Health Care and Sciences」に3月4日掲載された。  新型コロナワクチンは日本で2021年2月に承認され、がん患者において接種が推奨されている。しかし、がん患者のワクチン接種状況や副反応に焦点を当てた研究はほとんどない。患者はがん治療への影響も含めて多くの不安を抱えるため、医療職の関与が重要となる。

肺炎への広域抗菌薬使用、オーダーエントリーシステムで減少/JAMA

 肺炎でICU以外に入院した成人患者において、患者特異的な多剤耐性菌(MDRO)の感染リスク推定に基づき、リスクが低い患者に対し標準スペクトラム抗菌薬を推奨するオーダーエントリーシステム(computerized provider order entry:CPOEバンドル)の使用は、通常の抗菌薬適正使用支援の実践と比較し、広域スペクトラム抗菌薬の経験的使用が有意に減少した。ICU転室までの日数および在院期間に差はなかった。米国・カリフォルニア大学アーバイン校のShruti K. Gohil氏らが、米国の地域病院59施設で実施したクラスター無作為化比較試験「INSPIRE(Intelligent Stewardship Prompts to Improve Real-time Empiric Antibiotic Selection)肺炎試験」の結果を報告した。

長引く咳や痰、新型コロナ以外で増加傾向の疾患とは

 5月9日は「呼吸の日」。これに先駆け、インスメッドは罹患者数/死亡者数が増加傾向にある肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)に関するオンラインアンケート調査を実施した。その結果、肺NTM症について、「知っている」と回答したのは9.3%、「聞いたことがあるが、詳しくは知らない」は22.3%と、認知率の低さが浮き彫りになった。また、肺NTM症の症状として特徴的な咳や痰の症状を有していたにもかかわらず、全回答者の半数以上(608例)は医療機関を未受診と回答。その理由を尋ねたところ、79.9%が「病院に行くほどではないと思っている」と回答していたことも明らかになった。

2024年の医師のコロナワクチン、接種する/しないの二極化進む/医師1,000人アンケート

 新型コロナワクチンの全額公費による接種は2024年3月31日で終了した。令和6年度(2024年度)は、秋冬期に自治体による定期接種が開始される。定期接種の対象となるのは65歳以上、および60~64歳で心臓、腎臓または呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される人、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な人で、対象者の自己負担額は最大で7,000円となっている。なお、定期接種の対象者以外の希望者は、任意接種として全額自費で接種することとなり、2024年3月15日時点の厚生労働省の資料によると、接種費用はワクチン代1万1,600円程度と手技料3,740円で合計1万5,300円程度の見込みとなっている。この状況を踏まえ、医師のこれまでのコロナワクチン接種状況と、今後の接種意向を把握するため、主に内科系の会員医師1,011人を対象に『2024年度 医師のコロナワクチン接種に関するアンケート』を4月1日に実施した。

重症COVID-19生存患者、64%は1年後も健康に問題

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の辛く長い闘病期間を生き延びても、無傷ではいられない可能性があるようだ。新たな研究で、重症のCOVID-19を経験した患者の3分の2近くは、発症から1年が経過しても依然として身体や精神面、思考力に問題を抱えていることが示された。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)医学部のAnil Makam氏らによるこの研究の詳細は、「Critical Care Medicine」に4月10日掲載された。Makam氏は、「最も重篤で長期にわたるCOVID-19を経験した世界中の数百万人の患者」が直面しているジレンマを浮き彫りにする結果だとの見方を示している。

コロナ後遺症での運動制限は不要

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症のある患者に対する運動は、制限ではなくむしろ励行すべきであることを示唆するデータが報告された。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のAndrea Tryfonos氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に4月4日掲載された。  COVID-19急性期以降にも遷延する後遺症(post-COVID condition;PCC)のある状態での運動は、倦怠感の悪化や筋肉痛などを来しやすいことが知られている。そのため、「世界保健機関(WHO)などはPCC患者への運動を積極的には推奨していない」と、論文の筆頭著者であるTryfonos氏は解説。しかし、運動を控えることで筋肉量や筋力が低下して、状態がより悪化してしまうことも考えられる。そこで同氏らは、PCC患者では運動が本当に悪影響を及ぼすのかを確認する研究を行った。

小さな子どもとの接触は高齢者の肺炎リスクを高める?

 指がベタベタしていたり、鼻水が出ていたりといった小さな子どもにありがちな様子はかわいらしい。しかし、60歳以上の人にとって、未就学児との接触は、危険な肺炎を引き起こす可能性のある細菌である肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae、以下、肺炎球菌)の主要な感染経路となり得る可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。米イェール大学公衆衛生大学院のAnne Wyllie氏らによるこの研究結果は、欧州臨床微生物・感染症学会議(ECCMID 2024、4月27〜30日、スペイン・バルセロナ)で発表予定。  肺炎球菌は耳や副鼻腔の感染症のほか、肺炎や敗血症、髄膜炎などのより重篤な感染症の主要な原因菌である。米疾病対策センター(CDC)によると、米国では毎年、肺炎球菌感染症により15万件の入院が発生しており、その多くは高齢者である。肺炎球菌は、子ども(特に5歳未満)における肺炎の主要な原因菌であり、また、成人の市中肺炎の10〜30%の原因菌でもある。さらにCDCは、肺炎球菌が定着した無症候性のキャリアーの割合は、成人では5〜10%であるのに対し、学齢期の子どもでは20〜60%に上ると推定している。

腸内での酪酸産生菌の増加は感染症リスクの低下と関連

 腸内で酪酸産生菌が10%増えるごとに、感染症による入院リスクが14〜25%低下することが、オランダとフィンランドの大規模コホートを対象にした研究で明らかになった。アムステルダム大学医療センター(オランダ)のRobert Kullberg氏らによるこの研究結果は、欧州臨床微生物学・感染症学会(ECCMID 2024、4月27〜30日、スペイン・バルセロナ)で発表予定。  酪酸は、ビフィズス菌や乳酸菌などの「善玉」の腸内細菌が食物繊維を分解・発酵させる際に産生される短鎖脂肪酸の一種である。米クリーブランド・クリニックの説明によると、酪酸は大腸の細胞が必要とするエネルギーの大部分(約70%)を供給しており、消化器系の健康に重要な役割を果たしているという。

コロナよりもインフルエンザの方が脳への影響が大きい

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)よりもインフルエンザの方が、神経疾患により病院で治療を受ける可能性の高いことが、COVID-19またはインフルエンザにより入院した患者を追跡した新たな研究で明らかになった。米ミシガン大学アナーバー校のBrian Callaghan氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に3月20日掲載された。Callaghan氏は、「われわれが予測していた通りの結果ではなかったが、COVID-19で入院しても、インフルエンザで入院した場合と比べて、一般的な神経疾患に対する治療が増えるわけではないことが分かった点では心強い結果だった」と同大学のニュースリリースの中で述べている。