厚労省も新制度義務化:精神疾患患者「社会復帰」へ

提供元:ケアネット

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公開日:2012/06/25

 

 「統合失調症」へ呼称変更されてから10年が経過した。この間を振り返り、「統合失調症呼称変更で何が変わったか?」との演題で、国立精神神経医療研究センター 高橋清久氏がヤンセンファーマメディアセミナーにて講演した(2012年6月14日)。

社会復帰を目指した「統合失調症」への呼称変更
 2002年、世界精神医学会(WPA)横浜大会と同時開催された日本精神神経学会総会において「精神分裂病」から「統合失調症」へ呼称が変更された。変更の背景には、精神分裂病という病名が「精神そのものの分裂」と誤解されることによる患者や家族の苦痛が、予後や社会復帰への悪影響につながっていることがあった。そのため、病名が患者や家族に不利益をもたらさないよう考慮し、さまざまな新病名案の中から「統合失調症」が選ばれ、これに改めることとした。

さらなる「統合失調症」への理解を求める
 本セミナーでは20代~60代の一般人男女500名を対象に、統合失調症に対する理解度やイメージに関する全国web調査の結果も報告された。精神疾患の病名に対する認知状況では、「うつ病」が92.4%と最も高い一方で、「統合失調症」は55.6%と約半数程度であった。さらに「精神分裂病」に対する認知度は64.6%と統合失調症よりも依然として高い結果であった。また、「統合失調症」の認知状況は、「あまり知らない」「全く知らない」と回答した割合が61%、「非常によく知っている」「よく知っている」と回答した割合が14%と大きな開きがあり、病名および疾患全般に関する理解が十分でないことを示す結果となった。

統合失調症患者との触れ合いがポイント
 統合失調症のイメージに関する調査では、多くの方が「実際よりも重い病状の病気である」との認識を持っている。そして、以前の調査よりは減少してはいるものの、「なるべく関わりたくない」と不安を抱いている割合が高かった。また、「統合失調症」に対する認知が高い(非常によく知っている/よく知っていると回答)人ほど統合失調症患者は差別されているというイメージを持っていることもわかった。

 高橋氏は「統合失調症に対する誤ったイメージを是正する手段として、患者との触れ合いを体験することが重要である」と語る。看護学生を対象に、統合失調症患者への実習体験前後のイメージ調査の報告を紹介し、実習前は統合失調症に対し「怖い」「暗い」「コミュニケーションが取れない」と感じていたが、実習後は「怖くない」「やさしい」「普通」とイメージが変化することから、より多くの方々に触れ合い体験する機会を持ってほしいと述べた。

統合失調症の治療ゴールは「社会復帰」
 社会復帰を目指す上で、治療薬や治療ターゲットも変化している。入院主体の医療から外来移行、社会復帰を目指し、第二世代抗精神病薬を主体とした単剤治療や再発防止をターゲットとした治療が求められるようになってきた。最近では第二世代抗精神病薬の剤型も豊富になっており、「液剤」や「口腔内崩壊錠」「徐放錠」「持続性注射剤」など患者の希望や生活スタイルに合わせた剤型選択が可能となり、服薬アドヒアランスの向上および再発予防に寄与するものと考えられる。高橋氏は「持続性注射剤の使用は社会復帰やQOL向上などメリットが大きい」ということを具体的な事例を交えて強調した。

統合失調症患者の「社会復帰」へ厚労省も動き出す
 厚生労働省は、新たに精神障害者の採用を企業に義務づける方針を固めた。障害者雇用促進法は、企業などに、全従業員に占める障害者の割合を国が定める障害者雇用率以上にするよう義務づけている。これまで、障害者の範囲は「身体障害者」「知的障害者」に限られていたが、「統合失調症」や「うつ病」などの精神疾患患者を新たに加える。これにより、統合失調症患者の社会復帰がさらに進み、より多くの方々の統合失調症に対する認知向上と偏見の是正がもたらされることが期待される。

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(ケアネット 鷹野 敦夫)