2001年に米国で起きた同時多発テロ「9.11」事件の際、世界貿易センターで救助活動に携わった数千名のニューヨーク市消防局(FDNY)の隊員(消防士・救急医療サービス隊員)は、大量の粉塵に曝されたことによる重大な肺機能低下に至った。米国モンテフィオレ医療センター&アルバート・アインシュタイン医科大学呼吸器病学部門のThomas K. Aldrich氏らは、粉塵曝露の長期の影響を評価しようと、7年後の隊員たちの状況を調査した。結果、大多数がその後も肺機能が回復せず低下した状態のままであることが判明したという。NEJM誌2010年4月8日号掲載より。
現役・引退含むFDNY隊員約1万2千名のFEV1推移を追跡
Aldrich氏らは、2000年3月12日~2008年9月11日の間にルーチンで12~18ヵ月間隔で行われてきた、FDNY隊員(現役・引退含む)のスパイロメトリ検査に基づくFEV1を分析した。
対象となったのは、2001年9月11日~9月24日の間に世界貿易センターで救助活動にあたっていた1万3,954名のFDNY隊員。そのうち本試験には1万2,781名(91.6%)が参加した。分析されたスパイロメトリ検査結果数は61,746件だった。
追跡期間中央値は、消防士が6.1年、救急医療サービス(EMS)隊員が6.4年だった。
消防士13%、EMS隊員22%が肺機能異常から回復せず
追跡最初の1年間の、平均FEV1は、全員が有意に低下していた。喫煙歴のない消防士の低下(439mL低下、95%信頼区間:408~471)が、喫煙歴のないEMS隊員の低下(267mlL、同:263~271)と比べて、より大きかった(両低下の比較ともP<0.001)。
その後6年間、ほとんどにFEV1の回復は認められず、年平均、消防士が25mL、EMS隊員40mL、FEV1が低下していた。
最初の1年間でFEV1正常値下限を下回った喫煙歴なしの隊員は、消防士では3%から18%へと増加、EMS隊員では12%から22%へと増加していた。その後6年の間は安定的に、消防士は13%、EMS隊員は22%で推移していた。
(医療ライター:武藤まき)