グルタミン酸ドパミンD3受容体遮断による統合失調症の新たな創薬の可能性 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2012/10/04 統合失調症の新たな創薬の可能性を示唆する、グルタミン酸作動経路を有するドパミンD3受容体の直接的および間接的相互作用について、フランス・Pierre Fabre Research CenterのSokoloff P氏らが報告した。側坐核中型有棘ニューロンの非対称性シナプスでグルタミン酸作動性とみられるドパミンD3受容体の免疫活性を描出したというもので、著者は「本知見は、新たなドパミンD3受容体選択的作動薬の開発コンセプトのフレームワークを提供するもので、統合失調症におけるグルタミン酸を直接的にターゲットとした、オリジナルの有効性、安全性を有する創薬出現の可能性がある」と述べている。Naunyn Schmiedebergs Arch Pharmacol誌オンライン版2012年9月22日号の掲載報告。 オリジナルデータおよび既報の前臨床・臨床試験データに基づき、NMDAシグナルを有するドパミンD3受容体の直接的および間接的相互作用と、統合失調症に対するその機能的影響、治療上の影響を報告した。 主な知見は以下のとおり。 ・電子顕微鏡による超微細構造レベルで、側坐核中型有棘ニューロンの非対称性シナプスでグルタミン酸作動性とみられるドパミンD3受容体の免疫活性を描出した。 ・この所見は、グルタミン酸ドパミンD3受容体の直接的相互作用の存在を支持するもので、以前に報告されたシナプス後肥厚部でのNMDAシグナル(Ca2+/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼIIに関与)との相互作用の報告(Liu et al. 2009)と一致するものであった。 ・グルタミン酸ドパミンD3受容体の直接的相互作用は、中脳皮質ドパミン神経D3受容体による陰性の制御に関与する可能性があった。また、前頭前皮質ドパミンによるグルタミン酸作動性錐体細胞の複雑な制御に関与する可能性があった。このことは、ジゾシルピン(MK-801)による長期NMDA受容体遮断という錐体細胞活性の制御により例証可能であった。 ・ドパミンD3受容体選択的部分作動薬であるBP897は、皮質c-fos mRNA発現の調節不全、錐体細胞の過興奮性を改善する。 ・ドパミンD3受容体の遮断(既知のドパミンD3受容体拮抗薬や斬新なドパミンD3受容体選択拮抗薬F17141)は、行動面において、マウス実験でのMK-801のNMDA受容体遮断によって引き起こされる多動や社会的相互作用障害を改善するという抗精神病薬のような効果をもたらす。 関連医療ニュース ・初回エピソード統合失調症患者、長期予後予測に新基準! ・「統合失調症リスク因子」海馬における働きが判明 ・検証「グルタミン酸仮説」統合失調症の病態メカニズム (ケアネット) 原著論文はこちら Sokoloff P et al. Naunyn Schmiedebergs Arch Pharmacol. 2012 Sep 22. [Epub ahead of print] 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) 関連記事 ブロナンセリンのドパミンD3受容体への作用 医療一般 日本発エビデンス(2019/10/04) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 複雑CAD併存の重症AS、FFRガイド下PCI+TAVI vs.SAVR+CABG/Lancet(2024/12/20) 慢性心血管系薬のアドヒアランス不良、リマインドメッセージでは改善せず/JAMA(2024/12/20) “Real-world”での高齢者に対するRSVワクチンの効果(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)(2024/12/20) 切除不能肝細胞がん、アテゾ+ベバがTACEの代替となる可能性/ESMO Asia2024(2024/12/20) EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法のアジア人データ(FLAURA2)/ESMO Asia2024(2024/12/20) 進行・再発子宮体がんの新たな治療選択肢/AZ(2024/12/20) 導入療法後に病勢進行のないHR+/HER2+転移乳がん1次治療、パルボシクリブ追加でPFS改善(PATINA)/SABCS2024(2024/12/20) 統合失調症発症後20年間における抗精神病薬使用の変化(2024/12/20) SGLT2阻害薬はがん発症を減らすか~日本の大規模疫学データ(2024/12/20) [ あわせて読みたい ] クローズアップ!精神神経 7疾患(2021/01/26) ~プライマリ・ケアの疑問~ Dr.前野のスペシャリストにQ!【精神科編】(2019/06/15) Dr.松崎のここまで!これだけ!うつ病診療 (2016/03/07) 薬剤性QT延長症候群とは(2015/09/30) 全国在宅医療・介護連携研修フォーラム(2015/03/31) ひと・身体をみる認知症医療(2015/03/15) 診療よろず相談TV(2013/10/25) 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会 領域別セッション(2013/11/12) 「てんかんと社会」国際シンポジウム(2013/09/24) 柏市 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会(2013/06/24)