神経ステロイド減量が双極性障害患者の気分安定化につながる? 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2013/01/11 近年、臨床および前臨床研究から、GABA受容体作動性神経ステロイドの量的変動と気分障害の病態との関連性が明らかになりつつある。イタリア・カリアリ大学のMauro Giovanni Carta氏らは、これまでに報告された基礎的ならびに臨床的研究をレビューし、神経ステロイド量の減少が気分障害の悪化に関連しており、神経ステロイド量の是正/増加が気分安定化につながる可能性を示唆した。Behavioral and Brain Functions誌オンライン版2012年12月19日号の掲載報告。 神経ステロイドは脳内で合成され、脳の興奮性を調節しているが、この神経ステロイドが鎮静作用、麻酔作用、抗痙攣作用を有し、さらに気分に影響を及ぼすというエビデンスが蓄積されつつある。一般に、神経ステロイドはプレグナン系(アロプレグナノロン、アロテトラヒドロデオキシコルチコステロン)、アンドロスタン系(アンドロスタンジオール、エチオコラノン)、サルフェート系(プレグネノロンサルフェート、デヒドロエピアンドロステロンサルフェート)などに分類されるが、とくにアロプレグナノロン、アロテトラヒドロデオキシコルチコステロンなどのプロゲステロン誘導体が気分障害の病態に関与し、気分安定化に重要な役割を果たしている可能性が示唆されている。 著者は、これらは、以下の主な知見によって支持されるとした。 ・双極性障害の気分安定化への有効性が示されているクロザピンおよびオランザピンは、ラットの海馬、大脳皮質および血清中のプレグネノロンレベルを上昇させる。 ・リチウム投与マウスでは、非投与マウス(コントロール)に比べ血中アロプレグナノロン、プレグネノロンレベルの上昇が認められる。 ・双極性障害の女性では、概して月経周期に関連して症状の悪化がみられる。出産直後はプロゲステロン誘導体レベルの低下が認められ、それに伴って気分障害が発症または再発しやすい。 ・一方、双極性障害の改善を認めた女性では、月経前の期間に健常人または大うつ病性障害の女性に比べて血漿アロプレグナノロン濃度の上昇が認められる。 ・うつ病エピソードの期間、血中アロプレグナノロンレベルは低い。 ・フルオキセチンは、うつ病患者における神経ステロイドレベルを正常化する傾向にある。 ・以上の結果、「多くの抗痙攣薬が双極性障害に対して有効である、あるいは神経ステロイドに抗痙攣作用がみられるという事実と矛盾しない」とした上で、「神経活性ステロイドの作用に関するさらなる探究は、気分障害、とくに双極性障害の病因および治療の研究において、新分野の開拓につながりうる」としている。 関連医療ニュース ・夢遊病にビペリデンは有望!? ・オキシトシン鼻腔内投与は、統合失調症患者の症状を改善 ・南に住んでる日本人では発揚気質が増強される可能性あり (ケアネット) 原著論文はこちら Carta MG, et al. Behav Brain Funct. 2012 Dec 19;8(1):61. [Epub ahead of print] 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 複雑CAD併存の重症AS、FFRガイド下PCI+TAVI vs.SAVR+CABG/Lancet(2024/12/20) 慢性心血管系薬のアドヒアランス不良、リマインドメッセージでは改善せず/JAMA(2024/12/20) “Real-world”での高齢者に対するRSVワクチンの効果(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)(2024/12/20) 切除不能肝細胞がん、アテゾ+ベバがTACEの代替となる可能性/ESMO Asia2024(2024/12/20) EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法のアジア人データ(FLAURA2)/ESMO Asia2024(2024/12/20) 進行・再発子宮体がんの新たな治療選択肢/AZ(2024/12/20) 導入療法後に病勢進行のないHR+/HER2+転移乳がん1次治療、パルボシクリブ追加でPFS改善(PATINA)/SABCS2024(2024/12/20) 統合失調症発症後20年間における抗精神病薬使用の変化(2024/12/20) SGLT2阻害薬はがん発症を減らすか~日本の大規模疫学データ(2024/12/20)