統合失調症をめぐる治療については近年、入院から地域へという考え方の変化や、第二世代抗精神病薬の登場および心理・社会的介入の導入など大きな変化が起きている。英国・クライトンロイヤル病院のSomashekara Shivashankar氏らは、特定地域におけるそれら変化の影響を確認するため、過去25年間の有病率等の変化を調べた。その結果、陰性症状患者が減少する一方で陽性症状が増加している傾向が認められたが、社会的な介入機能レベルは変わっていないように見えることなどを報告した。Schizophrenia Research誌2013年5月号の掲載報告。
本研究の背景には、統合失調症をめぐる治療の変化を踏まえて、それらの介入が以前の治療よりも優れているかについてエビデンスが求められているという現状があった。研究グループは、特定地域における統合失調症の治療の変化の影響を確認することを目的とし、臨床症状と心理・社会的介入のアウトカムに的を絞って調べた。1981年に行われたサーベイを2006年に再度行い、スコットランド南西部ニスデール(Nithsdale)に住む統合失調症の人の割合を特定し、key informant法を用いて有病率を測定した。また、臨床症状と社会的機能について、同一のスケールを用いて評価し、両時点の程度を比較した。
主な結果は以下のとおり。
・205例の統合失調者を特定した。ニスデールの住民における有病率は3.59/1,000人であった。
・2006年の評価では、陰性症状を経験していた人がより少数であった一方、陽性症状を経験している人がより多かった。
・また、振戦はより少なくなっていたが、遅発性ジスキネジアやパーキンソン病様症状の有病率に有意な変化は認められなかった。
・2006年の評価において、配偶者/パートナーや両親と暮らしている人は少なかった。また1981年時と比べて一般雇用で働いている人は少なかった。社会全体の適応支援レベルに変化はみられなかった。
関連医療ニュース
・10年先を見据えた抗精神病薬選択のポイント
・厚労省も新制度義務化:精神疾患患者の「社会復帰」へ
・100年前と比べ統合失調症患者の死亡は4倍増、最大の死因は自殺、とくに若者で
(ケアネット)