鹿児島大学医学部皮膚科学教室の馬場 直子氏、同教授・金蔵 拓郎氏らは、鹿児島県の黒酢メーカーが新たな製造法で商品化した黒酢「泉」について検討した結果、扁平上皮がん(SCC)細胞に対する抗腫瘍効果が認められたことを報告した。黒酢は玄米を原料とする日本の伝統的な食材で、体に良いとされるアミノ酸やミネラルなどが豊富に含まれている。「泉」はそれらの含有成分が、新たな製造法によりさらに多量に含まれているという。Nutrition and Cancer誌オンライン版2013年8月5日号の掲載報告。
研究グループは、黒酢には抗酸化作用があることが知られていることから、「泉」のSCC細胞株HSC-5に対する抗腫瘍効果を調べることを目的とした。検討は、一般的な醸造酢との比較にて行われ、酸度を一般的な4.2%に調整してHSC-5細胞の治療を行った。
主な結果は以下のとおり。
・MTT試験、トリパンブルー色素排除試験の結果、「泉」は一般的醸造酢と比べて、HSC-5細胞の増殖を有意に阻害した。
・ヨウ化プロピジウム(PI)フローサイトメトリー解析、アネキシンV/PI染色法により、「泉」または一般的醸造酢で治療した細胞あるいは未治療だった細胞間で、アポトーシスを起こした細胞数に違いはないことが明らかになった。
・このことから、プログラムされた細胞死や壊死といった新たなネクローシスの形が考えられた。それはキーシグナル分子のRIPK3により伝達され、ダメージ関連分子パターン(DAMPs)の細胞放出に帰結するものと考えられた。
・「泉」でHCS-5細胞を治療した場合、RIPK3とDAMPsの一つであるHMGB1の細胞レベルは、培地に放出された量が明らかに増大した。
・これらの所見から、「泉」は、プログラムされた細胞死(壊死)を介してヒトのSCC細胞の増殖を阻害することが示唆された。
(ケアネット)