アルツハイマー病、アミロイドβ蛋白による“炎症反応”が関与

提供元:ケアネット

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公開日:2013/10/16

 

 カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のPatrick L. McGeer氏らは、アルツハイマー病(AD)がアミロイドβ蛋白(Abeta)により誘発される炎症反応の結果によるものとし、早期の段階から抗炎症薬による介入を行うことの意義を示唆した。Acta Neuropathologica誌2013年10月号の掲載報告。

 ADの重要な病因として、アミロイドカスケード説が広く認知されている。すなわち、ADの原因はAbeta産物であり、Abetaあるいはそのオリゴマーが神経毒性を示すとされている。しかし、筆者らは、Abeta自体がADの原因となりえないと考えたという。その理由として、毒性を引き起こすにはμmol濃度のAbeta体が必要であるが、実際のところ脳内レベルはpmolの範囲内であり、必要とされる濃度の100万倍も低いからだという。そして、おそらくADは、後にタウの凝集につながる細胞外Abeta沈着により誘発される“炎症反応”の結果であると示唆した。

 その理由として次の点を挙げている。

・実際、疾患進行時に活性化ミクログリアによる炎症反応が過剰に増強されている。
・これまでの疾患修飾治療(根本治療)は失敗に終わっており、中心的役割を果たしている炎症を考慮に入れない限り、このような状況が続くと思われる。
・多数の疫学研究および動物モデルを用いた研究において、抗炎症薬として最も広く使用されているNSAIDsが、ADに対して実際に補助的な効果を有することが示されている。

 そしてこれらの研究は、疾患修飾として“抗炎症”というアプローチを支持するものと言えるとまとめた。

 一方、バイオマーカー研究において、臨床的に確認される何十年も前に疾患が発症していることが明らかにされていることについても言及した。著者は、これらの研究が「早期介入の必要性を指摘している」と述べる。バイオマーカーと病理データの組み合わせにより、疾患の経過を約5年単位の6つのphaseに分けることができ、phase1は髄液中のAbetaの減少、phase2は髄液中のタウ増加とPETによる脳内Abeta沈着の確認、phase 3はPET-FDGによる脳内代謝速度の若干の減少、phase 4はMRIによる脳容積の若干の減少とわずかな認知障害、phase 5はスキャンによる異常所見の増加とADの臨床診断、phase 6は病院でのケアを要するADの進行である、とした。

 以上を踏まえて、「疾患経過の早期における抗炎症薬の活用により、治療の機会が広がる。予防的でないものの、このような薬剤はAbetaとタウ凝集の両方に引き続いて起こる現象を防ぎうる手段として有利である。疾患発症から認知機能が低下するまでの間には十年以上あるため、真に効果的な疾患修飾レジメンを導入する機会が存在する。この機会の利用が将来の課題である」とまとめている。

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(ケアネット)