双極性障害の診断、DSM-IV-TRでは不十分

提供元:ケアネット

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公開日:2014/01/22

 

 双極性障害を正確に診断することは容易ではない。とくに、かかりつけ医においてはうつ病との鑑別が困難な場合も少なくない。スイス・チューリッヒ大学精神科病院のJules Angst氏らは、ICD-10基準で双極性障害(BD)と診断が付いている患者が、プライマリ・ケアの場面でDSM-IV-TRによってBDと診断されるかを検証した。その結果、診断された患者はわずかで、DSM-IV-TRのBD診断基準は限定的であることが示された。過去20年の間に、DSM-IVおよびDSM-IV-TRにおける軽躁病の診断概念が、非常に限定的であるとのエビデンスが蓄積されていた。Journal of Affective Disorders誌2014年1月号の掲載報告。

 研究グループは、DSM-IVおよび修正版DSM-IV-TRが、BD治療歴のある患者について双極性を検出できるかを検討するBipolact II試験を実施した。現在、新たに出現した大うつ病エピソード(MDE)について一般開業医(GP)の診療を受けている患者を対象に、観察的な単回受診サーベイ法にて検討した。

 主な結果は以下のとおり。

・試験は、フランスのGP診療所201ヵ所で、成人患者390例を対象に行われた。
・GPは、平均年齢53.3±6.5歳、男性80.1%であり、Bipolact Educational Programによる専門的教育を受けており、うつ病患者の治療に精通していた。
・被験者390例のうち、129例(33.1%)は双極性障害(ICD-10基準適格)の既往患者であった。
・大半の患者(89.7%)に抗うつ薬による治療歴があった。しかし、それらの患者のうち、DSM-IV-TRのBD診断基準を満たした例は9.3%にとどまった。
・対照的に、ICD-10基準BD患者129例では、79.1%が修正版DSM-IV-TRのBD診断基準を満たした。それらの患者は、抗うつ薬治療中に衝動制御障害や躁病/軽躁病を繰り返すことが強く認められた。
・本検討は、試験に参加したGPの訓練が限定的である点、患者の思い出しバイアスと、BD未治療患者が関与していない点で限定的であった。
・以上を踏まえて著者は、「MDEについてフランスGPを受診したICD-10基準適格BD患者が、DSM-IV-TRのBD診断基準を満たした例はわずかであった。このことは、DSM-IV-TR診断基準はBD診断に不十分であり、非常に限定的なものであることを示唆する。修正版DSM-IV-TRは感度は高かったが、BD患者の20%を検出できなかった」とまとめている。

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(ケアネット)