英国・ロンドン大学のVasiliki Orgeta氏らは、認知症に対する標準的ケアに精神療法を追加することで、併存することの多い不安や抑うつに有効であるか否かを明らかにするため、システマティックレビューを行った。その結果、抑うつおよび医師評価による不安は精神療法により軽減すること、その一方で自己評価あるいは介護者評価による不安の軽減には有効性を認めなかったことを報告した。Cochrane Database Systematic Reviewsオンライン版2014年1月22日号の掲載報告。
認知症および軽度認知障害(MCI)を有する者は不安や抑うつを非常によく経験するため、精神的な介入が有用な治療とされてきた。また最近の研究で、認知症およびMCIではwell-beingの改善を目的とした精神療法の機会が限られていることが示唆されている。したがって、アウトカム改善および将来的な実臨床での推奨という観点から、精神療法の有効性に関するエビデンスを把握するためのシステマティックレビューは有用だと考えられる。このような背景からOrgeta氏らは、認知症またはMCIにおける不安および抑うつの軽減を目的とした精神療法の有効性を評価するため、レビューを行った。
Cochrane Dementia and Cognitive Improvement Group Specialized Registerおよび公開・未公開データの情報も検索し、認知症またはMCIに対する標準的ケアまたはプラセボ(計画的でない突発的な対応:コントロール群)と、それらに精神療法を追加した場合を比較検討する無作為化対照試験(RCT)をレビューの対象として選択した。試験の選択、データの抽出、試験のバイアス評価は、2名のレビュワーが独立して行った。公表されている記事から情報が得られない場合は、著者をたどってさらに調査した。
主な結果は以下のとおり。
・RCT 6件の認知症被験者439例についてレビューを行った。MCIはいずれの試験にも含まれていなかった。試験実施国は数ヵ国にわたり、認知症患者は地域在住または施設に入所中であった。
・試験のバイアスが低かったのは1件のみで、残りの5件については、無作為化、盲検化、結果の報告に関する偏りなどのためバイアスリスクは不明または高かった。
・認知行動療法(CBT)、対人関係療法およびカウンセリングの方法は、試験によりさまざまであった。
・特別な精神療法を含め、数種類の介入を行っていた試験が2件あった。精神療法を追加した比較群では、標準的ケアに加えて注意-制御教育プログラム、診断のフィードバックや診断サービスなど、標準的ケアに比べやや多くのサービスが提供された。
・メタ解析により、うつ(6試験、439例、平均標準差[SMD]:-0.22、95%信頼区間[CI]:-0.41~-0.03、エビデンスの質中等度)および医師評価による不安(2試験、65例、平均差[MD]:-4.57、95%CI:-7.81~-1.32、エビデンスの質は低)において、精神療法のポジティブな効果が示された。
・一方、自己評価による不安(2試験、SMD:0.05、95%CI:-0.44~0.54)、介護者評価による不安(1試験、MD:-2.40、95%CI:-4.96~0.16)においては、精神療法のポジティブな効果は示されなかった。
・患者QOL、日常生活動作(ADL)、神経精神症状、認知機能、介護者評価による抑うつ症状などの副次評価項目については、ベネフィットとハームのバランスがとれていた。ただし、試験の大半はこれらアウトカムの評価を行っていなかった。
・有害事象の報告はなかった。
・認知症の標準的ケアに精神療法を追加することで、うつ症状の軽減、医師評価による不安の軽減につながるというエビデンスが認められ、精神療法は患者のwell-beingを改善しうると考えられた。最も効果的な治療法の検討、ならびにMCIへの精神療法の有効性を評価するには、さらに質の高い研究が求められる。
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