向精神薬の使用はその後の認知症発症に影響を及ぼすのだろうか。国立台湾大学のFei-Yuan Hsiao氏らは、この仮説を検証するために、国民健康保険データベースに基づきpropensity scoreを用いた症例対照研究を行った。その結果、向精神薬の曝露は将来の認知症発症リスクと強く関連することが示された。Journal of the American Medical Directors Association誌2014年3月27日号の報告。
対象は認知症高齢者3万2,649人および非認知症高齢者3万2,649人。向精神薬(抗不安薬、抗精神病薬、睡眠薬、抗うつ薬)の使用、向精神薬の1日投与量、認知症の診断、propensity scoreを測定した。
主な結果は以下のとおり。
・向精神薬の使用は非使用者と比較して、将来の認知症発症のより高いオッズと関連していた(オッズ比[OR] 3.73、95%信頼区間[CI]:3.59~3.88)。
・重要なことは、認知症発症は向精神薬への長期的な曝露と強く関連していた。曝露期間別のORは90日未満 3.14(95%CI:3.01~3.28)、90~180日 5.48(95%CI:5.07~5.93)、180日超 7.54(95%CI:6.73~8.44)であった。
・向精神薬の累積投与量も同様に将来の認知症発症リスクとの強い関連が確認された。
・そのため、向精神薬を高用量で使用している高齢者、とりわけ2種類以上の向精神薬を併用している高齢者については、注意深く観察することが強く推奨される。
・さらに、向精神薬を使用中の高齢者では、適切なタイミングで認知機能を評価することが非常に重要である。
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