英国・南エセックスパートナーシップ大学NHS財団トラストのFrank M C Besag氏は、出産可能年齢女性の注意欠如・多動症(ADHD)薬物治療に関する課題を提起した。ADHDに対する薬物治療が胎児や新生児に及ぼす影響に関する情報が少ないとしたうえで、治療継続あるいは治療中止が母子に及ぼす影響を慎重に考慮することの重要性を強調している。Drug Safety誌2014年6月号の掲載報告。
著者は、「ADHDは小児およびティーンエージャーだけでなく、成人でも一般的という認識が浸透しつつある。このため、本疾患の治療を受けている出産可能年齢女性の数が増えているが、妊娠中および授乳中の薬物治療が懸念されるなか、ADHDに対する薬物治療が胎児や新生児に及ぼす影響に関する情報があまりに少ない点は注目に値する」として、下記のような提言を行った。
・ADHDに関連する衝動性は予期せぬ妊娠の増加を招くであろう。妊娠中および授乳中のADHD治療は乳児に不利な影響を及ぼすと推察されるが、治療中止や不適切な治療もまた母子を危険な状態に陥らせる可能性がある。
・妊娠期間中の薬力学と薬物動態の変化は、有効性と薬剤濃度の両方に影響しうる。しかし繰り返しとなるが、これに関して利用可能な指針はない。米国FDAはADHD薬物治療を胎児危険度分類の「カテゴリーC」とし、有害または有害でないことを確定するには十分な情報がないとしている。
・公開情報は限定的だが、少なくともメチルフェニデートにおいて、胎児奇形のリスク、薬剤の乳汁排泄量、新生児摂取量はきわめて低いようである。
・臨床医と患者には、以下のような3つの疑問が起こると思われる。
「妊娠前、妊娠中にADHD薬物治療を中止すべきか、あるいは継続すべきか?」
「妊娠経過中または出産後にADHDに対する治療用量を調整すべきか?」
「授乳してよいか、それとも控えるべきか?」
・ADHDに対する薬物治療の中止は母子をリスクにさらしうることから、子供へのリスクを考えて治療継続を考慮すべきである。
・データは依然として不十分であるが、子供へのリスクは少なくともメチルフェニデートについてはきわめて小さいと思われる。ただし最近、メチルフェニデートより流産により胎児を失う割合が増加するというエビデンスが示されている。
・出産可能年齢女性のADHD治療に関する議論はオープンかつ正直にバランスをとりながら行うべきで、治療継続が子供にもたらす可能性のあるリスクに関する情報不足を認め、また治療中止に伴って母子に起こりうるリスクにも注意を払うべきである。
関連医療ニュース
成人ADHDをどう見極める
メチルフェニデートへの反応性、ADHDサブタイプで異なる
抗精神病薬治療中の若者、3割がADHD
担当者へのご意見箱はこちら
(ケアネット)