産後うつ病への抗うつ薬治療、その課題は 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2014/10/07 産後うつ病に対する抗うつ薬治療は安全に行うことができるのか。英国・ロンドン大学のEmma Molyneaux氏らは、産後うつ病の抗うつ薬治療について、複数の抗うつ薬の有効性を評価し、それぞれの有効性についてその他のあらゆる治療、プラセボまたは標準治療と比較した、レビュー論文のアップデート(前回は2001年に実施)を行った。Cochrane Database Systematic Reviewsオンライン版2014年9月11日号の掲載報告。 レビューは2014年7月11日時点で、Cochrane Depression, Anxiety and Neurosis Group's Specialized Register(CCDANCTR)を検索し、分娩後6ヵ月以内にうつ病を呈し、抗うつ薬(単独または複数の組み合わせ)治療と他の治療、プラセボまたは標準治療を受けた女性が参加した無作為化試験(RCT)論文を適格とした。 2名のレビュワーがそれぞれ試験報告からデータを入手。また、不足情報については、可能な限り研究担当者から入手し、intention-to-treat解析が可能となるデータの探索を行った。比較試験であることが特定されたデータをプールし、ランダム効果メタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・レビューに組み込んだのは6試験、被験者596例であった。 ・全試験が、無作為化対照並行群間比較試験で、2件が英国で、3件が米国、1件がイスラエルで行われたものであった。 ・メタ解析は、抗うつ薬とプラセボを比較した試験から反応率と寛解率のプールデータについて行った。その他の比較は、識別できた試験数が少なくメタ解析はできなかった。 ・4試験(計233例)が、SSRIとプラセボの比較試験であった(セルトラリン使用が2件、パロキセチン使用1件、フルオキセチン使用1件)。 ・このうち2試験では、試験薬群、プラセボ群ともに精神療法も受けていた。 ・3試験(146例)のデータに基づくプールリスク比(RR)は、SSRIはプラセボよりも反応率(RR:1.43、95%信頼区間[CI]:1.01~2.03)、寛解率(同:1.79、1.08~2.98)が高いことを示した。残る1試験は反応率および寛解率のデータが報告されていなかった。 ・1試験(254例)では、抗うつ薬治療と、標準治療(当初4週間)+その後に聞き取り訪問を行った介入との比較が行われていた。結果、抗うつ薬治療は、標準治療(当初4週間)よりも改善率が有意に高率であった。しかし、その後の聞き取り訪問とでは差は認められなかった。 ・さらに、セルトラリンと三環系抗うつ薬ノルトリプチリンを比較した1試験(109例)があったが、有効性に差は認められなかった。 ・副作用は、多くの被験者女性が経験していたが、全試験の治療群間の有害反応数にエビデンスとして意味がある差は認められなかった。また、有害事象について、母乳を与えられた新生児に関するデータは限定的で、長期追跡したものはなかった。 ・1件を除く全試験で、高率または不確かな漸減バイアスと選択的なアウトカム報告が認められた。また、1件のプラセボ対照試験では途中脱落が50%超であった。 本結果を踏まえ、著者らは「SSRI投与を受けた群の反応率、寛解率がプラセボよりも高率であるとの所見が得られた。しかし、レビュー対象の試験が少なく、重要なアウトカム、とくに子供への影響の可能性に関する情報がほとんどなく、限定的な結論しか得られなかった」とまとめ、さらなる大規模長期の無作為化試験の必要性を提言している。 関連医療ニュース 日本語版・産後うつ病予測尺度「PDPI-R-J」を開発 統合失調症女性の妊娠・出産、気をつけるべきポイントは 栄養補助食品は産後のうつ病予防に有用か 担当者へのご意見箱はこちら (ケアネット) 原著論文はこちら Molyneaux E, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2014; 9: CD002018. [Epub ahead of print] 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) 関連記事 分娩様式と産後うつ病との関連~JECS研究 医療一般 日本発エビデンス(2021/09/20) 母親の産後うつ病と子供のADHDとの関係~メタ解析 医療一般(2022/10/21) 産後うつ病や不安神経症のリスク因子 医療一般(2021/04/21) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 未治療のマントル細胞リンパ腫、イブルチニブ+リツキシマブがPFS改善/Lancet(2025/10/20) 雪崩遭難者の窒息を新たな携帯型安全装置が防ぐ/JAMA(2025/10/20) 血栓溶解療法は脳梗塞発症後4.5~24時間経過した患者に有効か?(解説:内山真一郎氏)(2025/10/20) 日本の大学生の過度な飲酒とうつ病との関連性は(2025/10/20) 肥満症への胃バイパス手術の長期的効果は良好(2025/10/20) 日本人男性の遅漏有病率/日本性機能学会(2025/10/20) カンガルーケアが早産児の脳の発達を促す(2025/10/20) 心血管疾患は依然として世界で最多の死因(2025/10/20) [ あわせて読みたい ] 非機器的早期運動療法はDVT発生率を低減【論文から学ぶ看護の新常識】第1回(2025/02/05) トレンド・トーク『肺がん』(2024/06/11) 災害対策まとめページ(2024/02/05) Dr.大塚の人生相談(2024/02/26) IBD(炎症性腸疾患)特集(2023/09/01) 旬をグルメしながらCVIT誌のインパクトファクター獲得を祝福する【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第63回(2023/08/29) エキスパートが教える痛み診療のコツ(2018/10/11) 医療者向け『学校がん教育.com』(2022/12/01) アトピー性皮膚炎・乾癬特集まとめインデックス(2022/11/11) アトピー性皮膚炎・乾癬特集まとめインデックス(2022/11/11)