一般的に、抗精神病薬の長期使用は死亡率、とくに心血管死のリスクを増加させるといわれているが、この知見を実証する明確なデータは存在しない。フィンランド・国立健康福祉センターのMinna Torniainen氏らは、初回エピソード統合失調症患者を対象に、抗精神病薬曝露と死亡率との関係を検討した。Schizophrenia bulletin誌オンライン版2014年11月24日号の報告。
2006年以前にスウェーデンで統合失調症と診断された2万1,492例のうち、17~65歳の初回エピソード統合失調症患者1,230例を、2006~2010年までフォローアップした。患者情報は、全国レジスターを通じて収集した。全死亡率および原因別死亡率は、2006年1月~2010年12月までの累積抗精神病薬曝露の関数として計算した。1日当たりの抗精神病薬の用量はDDD(defined daily dose)/日で示し、高曝露群(>1.5DDD/日)、中間曝露群(0.5~1.5DDD/日)、低曝露群(<0.5DDD/日)、未曝露群(0DDD/日)とした。
主な結果は以下のとおり。
・一般集団から年齢、性別をマッチさせた対照群(21万4,920人)と比較すると、全死亡率は、未曝露群で最も高かった(HR 6.3、95%CI:5.5~7.3)。
・次いで、全死亡率が高かったのは、高曝露群(HR 5.7、95%CI:5.2~6.2)、低曝露群(HR 4.1、95%CI:3.6~4.6)、中間曝露群(HR 4.0、95%CI:3.7~4.4)の順であった。
・高曝露群(HR 8.5、95%CI=7.3~9.8)と未曝露群(HR 7.6、95%CI:5.8~9.9)では、低曝露群(HR 4.7、95%CI=3.7~6.0)、中間曝露群(HR 5.6、95%CI:4.8~6.6)のいずれかよりも、高い心血管死亡率との関連が認められた。
・初回エピソード統合失調症患者では、超過死亡率は未曝露群で最も高かった(HR 9.9、95%CI:5.9~16.6)。
結果を踏まえ著者らは、「統合失調症患者の死亡リスクは、抗精神病薬を使用しない場合に最も高く、全死亡と累積抗精神病薬曝露との相関はU字型の曲線を示す。適切な用量で使用する限りは、全死亡および心血管死亡とも抗精神病薬以外の要因に起因するものである」とまとめている。
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(ケアネット 鷹野 敦夫)