家族性アミロイドポリニューロパチー 早期診断のコツ

提供元:ケアネット

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公開日:2015/02/27

 

 2015年2月28日は「Rare Disease Day 2015世界希少・難治性疾患の日」である。これに先駆けて、2015年2月13日、都内にてファイザー株式会社が「家族性アミロイドポリニューロパチー」をテーマにプレスセミナーを開催した。本セミナーでは、演者に安東 由喜雄氏(熊本大学大学院生命科学研究部 神経内科学分野 教授)を迎え、希少疾患である同疾患について、診断方法と治療方法を中心に講演が行われた。

 本疾患は他の疾患との鑑別に苦慮することが多く、診断時には手遅れであることも多い。安東氏は、適切な鑑別と専門医への早期紹介の重要性を強調した。以下、セミナーの内容をレポートする。

家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)とは
 家族性アミロイドポリニューロパチー(familial amyloidotic polyneuropathy:FAP)は遺伝性・進行性の致死的な神経疾患である。20代後半から30代に発症するケースが多く、10:1の比率で男性が大多数を占める。症状は緩徐進行性で、肝移植を行わない場合は、発症からの平均余命は約10年である。現在、国内の推定患者数は1,000人程度と考えられており、厚生労働省による難治性疾患克服研究事業の対象疾患に指定されている。

 FAPは末梢神経、自律神経系、心、腎、消化管、眼などにアミロイドが沈着することで臓器障害を起こす、予後不良のアミロイド症である。常染色体優性遺伝を示すため、通常家族歴が認められるが、孤発例も少なくない。日本では熊本・長野に患者が集中しており、長年風土病とされてきた背景がある。

 FAPの臨床症状は末梢神経障害、自律神経障害、臓器障害の3つからなる。初発症状として最も多いものは、多発神経炎による下肢の感覚障害である。そのほかには、自律神経障害による下痢、便秘、吐気、嘔吐などの消化器症状、起立性低血圧による失神、男性では勃起不全など多彩な症状を呈し、患者はFAPと診断されるまでにさまざまな診療科を受診している。不整脈、手根管症候群による上肢の感覚障害や、硝子体混濁による視力低下を初発症状とする症例も少なくなく、初診時の診断は困難である。

家族性アミロイドポリニューロパチーの診断・標準治療とその問題点
 家族性アミロイドポリニューロパチーの確定診断には胃、十二指腸、腹壁の生検組織のコンゴーレッド染色、抗TTR抗体を用いた免疫染色などの組織診断、血清診断、遺伝子診断が行われる。現在、なかでも遺伝子診断が注目されており、熊本大学・信州大学の2施設で行うことができる。

 FAPの進行を抑制する手段として、肝移植と、経口剤であるタファミジスメグルミン(商品名:ビンダケル)の2つがある。肝移植は、FAPが早期発見された、若い患者には第1選択となる。しかし、深刻なドナー不足や、全身状態が不良な患者では施行できないなど問題点もある。肝移植ができない患者や、肝移植を行ったが症状が出現した患者には、経口剤を使用する。経口剤は、侵襲性がない治療方法であるが、1人につき年間約3千万円と非常に高額な薬剤である。

 しかし、いずれの治療法もFAPの根治療法ではないため、根治療法の出現が望まれている。また、現在の治療法は進行したFAPには効果がないため、FAPという疾患自体を啓発し、手遅れになる前に患者自身による自発的な早期受診を促していく必要もある。

家族性アミロイドポリニューロパチー治療の今後の展望
 2016年をめどに家族性アミロイドポリニューロパチーの抗体医薬が臨床治験に入るとされている。この抗体医薬は臓器に蓄積したアミロイドを溶かす効果があるとされており、FAPの根治療法となる可能性がある。安全な抗体医薬の登場は、FAP患者にとって希望の光となる可能性があり、実用化が強く期待されている。

家族性アミロイドポリニューロパチーを早期発見するために大切なこと
 家族性アミロイドポリニューロパチーは進行性・難治性の疾患の疾患であり、進行が進むと死に至ることもある。しかし、早期に発見した場合、肝移植や経口剤により、進行を遅らせることもできる。よって、いかに早く本疾患を鑑別するかが重要である。

 「日常診療において、原因不明の多発神経炎などを含む種々の臓器症状に遭遇した際はFAP を疑い、漫然と治療を行う前に早期に専門医へ紹介をすることが大切である」と安東氏は強調した。

(ケアネット 中野 敬子)