英国・チェリイ・ノウル病院のLucy A Buckley氏らは、統合失調症に対する支持療法の有効性を、その他の治療法と比較するレビューのアップデートを行った。24件の無作為化試験(RCT)を組み込み評価した結果、標準的ケアとの比較では再発、入院、全般的機能に有意差は認められず、また心理的あるいは心理社会的療法のほうが入院、精神状態の改善、患者の治療満足度において有意に良好であったという。ただし、いずれの試験もエビデンスの質がきわめて低いものであったため、支持療法とその他の治療法との差異を明確化するには至らなかったと述べている。Cochrane Database Systematic Reviewオンライン版2015年4月14日号の掲載報告。
レビューは、Cochrane Schizophrenia Group's register of trials(2012年11月)のデータを検索して行った。統合失調症患者を対象とし、支持療法とその他の治療あるいは標準的ケアを比較検討したすべてのRCTを検索対象とした。信頼性の高いソースから試験を選択し、質の評価ならびにデータを抽出。固定効果モデルを用いてリスク比(RR)および95%信頼区間(CI)を推算した。可能な限りintention-to-treat解析を実施した。連続データについては主に固定効果の平均差(MD)をCIと共に算出した。不均質性、公表バイアスも算出し、GRADEを用いてエビデンスの質を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・2012年以降に4件の新規試験が追加され、本レビューでは妥当な研究24件(2,126例)を対象とした。全体的に、エビデンスの質はきわめて低かった。
・主要アウトカムである再発、入院、全般的機能において、支持療法と標準的ケアの間に有意差は認められなかった。
・一方、心理的あるいは心理社会的療法は、支持療法と比べて有意に良好な成績であることが示された。すなわち、入院率(4件、306例、RR:1.82、95%CI:1.11~2.99、エビデンスの質は非常に低い)、精神状態の臨床的改善(3件、194例、RR:1.27、95%CI:1.04~1.54、エビデンスの質は非常に低い)、患者の治療満足度(1件、45例、RR:3.19、95%CI:1.01~10.7、エビデンスの質は非常に低い)において有意差が認められた。
・再発率、試験からの早期脱落、QOLに関して有意差は認められなかった。
・支持療法を認知行動療法(CBT)と比較した場合も、主要アウトカムに有意差は認められなかった。
・支持療法を家族療法および心理教育療法と比較したデータはきわめて限定的であり、関心の高い主要アウトカムの1つである全般的機能に関しては、いずれの研究においても臨床的に重要な変化を示すデータはなかった。
・支持療法と標準的ケアのアウトカムにおける差異を明確にするにはデータが不十分であった。
・入院、全般的な精神状態など、支持療法に比べ、その他の心理療法のほうが優位であることを示すアウトカムが複数認められた。しかしこれらの結果は、エビデンスの質が非常に低いと評価された数少ない小規模試験に基づいたものであった。支持療法を比較対照群とせず、主要な治療群に設定した大規模試験により研究を進めることで、成果が期待できるであろう。
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