日本人の10~20%は慢性疼痛を有しており、慢性疼痛は健康状態の悪化と関連することが知られている。大阪大学大学院 医学系研究科医療経済産業政策学寄附講座 教授の田倉 智之氏らは、日本人において慢性疼痛が及ぼす経済的影響について調査した。結果、慢性疼痛は健康状態のみならず労働生産性、日常生活活動障害、医療資源の使用および経済的負担と有意に関連していることを明らかにし、「治療率の向上と集学的なアプローチが生活の質を改善し経済的負担を減らす可能性がある」と報告した。Journal of Orthopaedic Science誌オンライン版2015年5月12日号の掲載報告。
調査は、日本で行われた成人の横断的健康調査National Health and Wellness Survey(NHWS)のデータ(3万例)を使用して行われた。
SF-12v2を用いて健康状態を、仕事の生産性および活動障害に関する質問票(WPAI)を用いて間接費用を評価するとともに、回帰分析を用いて直接費用(医療費)への影響も検討した。
主な結果は以下のとおり。
・慢性疼痛ありが785例、なしが2万9,215例であった。
・慢性疼痛のタイプは、腰痛(72.10%)および肩痛・肩こり(54.90%)が多かった。
・慢性疼痛あり群は、なし群と比較して患者背景や既往歴を調整後も、健康状態が有意に低く[精神的側面のQOLサマリースコア(44.26 vs. 51.14)、身体的側面のQOLサマリースコア(44.23 vs. 47.48)、いずれもp<0.05]、長期病欠(4.74 vs. 2.74%)、疾病就業(30.19 vs. 15.19%)、全労働障害(31.70 vs. 16.82%)、間接費用(148万8,385 vs. 80万4,634円)、日常生活活動障害(33.45 vs. 17.25%)、医師受診回数(9.31 vs. 4.08回)、救急外来利用回数(0.19 vs. 0.08回)および入院回数(0.71 vs. 0.34回)が有意に高かった(すべてp<0.05)。
・慢性疼痛あり群の約60%は未治療であった。
・直近1週間における疼痛重症度(0~11で評価)の平均スコアは5.26で、女性、高齢者、低所得、ならびに複数タイプの疼痛を有することが、重症度の高さと有意に関連しており(すべてp<0.05)、定期的な運動が疼痛重症度の低さと関連していた(p<0.05)。
(ケアネット)