米国・ホフストラ・ノースショアLIJ医科大学のPuja Appasaheb Naik氏らは、米国神経学会のガイドラインに準じてシステマティックレビューを行った。その結果、てんかんを有するドライバーと一般集団における交通事故率の違いに関するエビデンスは矛盾しており、結論は得られないことを報告した。Epilepsy&Behavior誌オンライン版2015年5月7日号の掲載報告。
研究グループは、PubMedを用いて1996年以降に発表された英語論文を検索し、てんかん患者と非罹患者における自動車運転による交通事故のリスクを比較検討した。
結果は以下のとおり。
・本レビューの対象となったエビデンスは、クラスⅡの研究が6件、クラスIIIの研究が1件であった。
・2件(クラスIIIおよびクラスII、各1件)は、一般集団と比較し、てんかん患者群で全交通事故率が減少する傾向がみられた。各研究の相対リスク(RR)は0.86(95%信頼区間[CI]:0.65~1.14)と1.00(同:0.95~1.06)であった。なお、どちらの研究も交通事故率は自己報告に基づいた。
・3件(すべてクラスⅡ)は、一般集団と比較して、てんかん患者群で全交通事故率の増大または増大傾向がみられた。RRは、保険会社・救急診療部・医師が報告しているデータベースに用いた研究で1.62(95%CI:0.95~2.76)、警察の報告を用いた研究で1.73(同:1.58~1.90)、救急来院に基づいた研究で7.01(同:2.18~26.13)であった。
・1件(クラスⅡ)は、死亡事故の発生率について、てんかん患者との比較において、他疾患に起因する事故は26倍、アルコール中毒に起因する事故は156倍と報告していた。
・1件(クラスⅡ)は、てんかん患者の発作による交通事故は、交通事故2,800件につき1件と報告していた。
一般集団と比較したてんかん患者の交通事故率について、矛盾した結果が得られたことについて、著者らは方法論的な差異を挙げたうえで、「今後の研究では、交通事故率の算出はてんかん患者の自己申告によらない客観的な指標を用い、分母には走行距離を用いるべきである」とまとめている。
【訂正のお知らせ】
本文に誤りがあったため、一部訂正いたしました(2016年8月24日)。
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