統合失調症患者への抗うつ薬併用、効果はどの程度か 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2015/06/16 抗精神病薬による適切な治療にもかかわらず、相当数の統合失調症患者が十分ではない臨床的アウトカムを示している。この問題の解決に向けて、これまでさまざまな精神薬理学を踏まえた併用療法が試みられており、その1つが抗精病薬治療への抗うつ薬の追加である。フィンランド・Kellokoski病院のViacheslav Terevnikov氏らは、統合失調症患者への治療について、抗精神病薬に種々の抗うつ薬を追加した際の有効性について検討した。その結果、抗うつ薬の種類によりさまざまな効果が認められたものの、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)に関しては明らかな有効性がみられなかったこと、抗うつ薬の追加により精神病の悪化はみられなかったことを報告した。International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2015年5月19日号の掲載報告。 研究グループは、統合失調症患者における陰性症状、陽性症状、認知機能、抑うつ、抗精神病薬に誘発される錐体外路症状に対する治療としての抗うつ薬追加投与の有効性を検討した。統合失調症に対する抗うつ薬による補助療法の有効性を評価した、公表されている無作為化対照試験(RCT)について、各種パラメーター(ベースライン時の臨床所見、患者数、実施中の抗精神病薬治療、抗うつ薬の追加用量、試験期間、有効性の評価方法とアウトカム)を用いてレビューを行った。 主な結果は以下のとおり。 ・41ジャーナルに36件のRCTが掲載されていた(1,582例)。 ・使用されていた抗うつ薬は、SSRI、デュロキセチン、イミプラミン、ミアンセリン、ミルタザピン、ネファゾドン、レボキセチン、トラゾドン、ブプロピオンであった。 ・ミルタザピンとミアンセリンは陰性症状に対し一貫した有効性を示し、両薬剤とも神経認知機能を改善するように思われた。 ・トラゾドンとネファゾドンは、抗精神病薬に誘発される錐体外路症状を改善するようにみえた。 ・イミプラミンとデュロキセチンにおいては、抑うつ症状の改善傾向が認められた。 ・統合失調症の臨床所見に対するSSRIの有効性を支持する明らかなエビデンスは認められなかった。 ・抗うつ薬の追加により精神病が悪化することはなかった。 結果を踏まえ、著者らは「多数のRCTがあるにもかかわらず、統合失調症における抗うつ薬追加の全般的有効性は主に方法論的問題により明らかにされないままである。しかし、いくつかの統合失調症ドメインに対する有効性に抗うつ薬のサブグループによる相違があるようで、これは当然ながら作用機序の違いによって生じるものである。また、抗うつ薬が精神病を悪化させる可能性はないと思われたが、より優れたデザインの、大規模で長期のRCTが求められる」とまとめている。 関連医療ニュース 統合失調症患者に対するフルボキサミン併用療法は有用か:藤田保健衛生大学 抗うつ薬が奏効しないうつ病患者への抗精神病薬追加投与は本当に有効か SSRI+非定型抗精神病薬の併用、抗うつ作用増強の可能性が示唆 (ケアネット) 原著論文はこちら Terevnikov V, et al. Int J Neuropsychopharmacol. 2015 May 19. [Epub ahead of print] 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) 関連記事 抗うつ薬の適応外処方、普及率はどの程度 医療一般(2017/03/17) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] アルドステロン産生腺腫に対する超音波内視鏡下経胃高周波アブレーション/Lancet(2025/02/21) 肥満者の鎮静下内視鏡検査、高流量鼻カニューレ酸素投与で低酸素症が減少/BMJ(2025/02/21) 妊娠糖尿病とメトホルミン―「非劣性試験で有意差なし」の解釈は難しい(解説:住谷哲氏)(2025/02/21) 第22回日本臨床腫瘍学会の注目演題/JSMO2025(2025/02/21) 1日1杯の緑茶が花粉症を抑制か~日本人大規模コホート(2025/02/21) 日本における第2世代抗精神病薬誘発性ジストニア〜JADER分析(2025/02/21) 50代の半数がフレイルに相当!早めの対策が重要/ツムラ(2025/02/21) 飲食店メニューのカロリー表示は摂食障害の患者にとって有害(2025/02/21) [ あわせて読みたい ] クローズアップ!精神神経 7疾患(2021/01/26) ~プライマリ・ケアの疑問~ Dr.前野のスペシャリストにQ!【精神科編】(2019/06/15) Dr.松崎のここまで!これだけ!うつ病診療 (2016/03/07) 薬剤性QT延長症候群とは(2015/09/30) 全国在宅医療・介護連携研修フォーラム(2015/03/31) ひと・身体をみる認知症医療(2015/03/15) 診療よろず相談TV(2013/10/25) 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会 領域別セッション(2013/11/12) 「てんかんと社会」国際シンポジウム(2013/09/24) 柏市 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会(2013/06/24)