第2世代抗精神病薬の持効性注射剤(LAI)は、統合失調症患者の臨床的安定に高い効果をもたらす。しかし、これまで統合失調症初回エピソード後に用いられることはあまり多くはなかった。米国・カルフォルニア大学ロサンゼルス校のSubotnik KL氏らは、統合失調症初回エピソードにおけるリスペリドンの有効性を、剤形の違い(LAIと経口剤)で比較検討した。その結果、LAIは経口剤に比べ、精神症状の増悪や再発率が低く、その背景にLAIの良好なアドヒアランスが関連していることを報告した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2015年6月24日号の掲載報告。
研究グループは、2005~2012年に、大学ベースのリサーチクリニックにおいて無作為化臨床試験を実施した。最近統合失調症を発症した86例を、リスペリドンLAI群または経口リスペリドン群に無作為に割り付けた。同時に各グループの半数を、認知機能改善を目的とした認知機能改善療法群または生活習慣と健康状態改善を目的とした健康行動トレーニング群に無作為に割り付けた。すなわち本研究は、リスペリドンLAIと経口リスペリドンの比較、そして認知機能改善療法と健康行動トレーニングの比較を行った12ヵ月間の臨床試験であった。解析はintent-to-treatにて、2012年10月4日~2014年11月12日に実施された。主要アウトカムは、精神疾患再発およびブレークスルー精神症状のコントロールとした。
主な結果は以下のとおり。
・86例が無作為化を受けた。そのうちLAI群の3例が治療を拒否した。
・リスペリドンLAI群は経口剤群と比較して、精神症状の増悪や再発率(またはその両方)が低かった(5% vs.33%、χ21=11.1、p<0.001、相対リスク減少 84.7%)。
・追跡期間にわたり、LAI群は幻覚および妄想の平均レベルを、より良好にコントロールした(β=-0.30、t 68=-2.6、p=0.01)。
・認知機能改善療法群と健康行動トレーニング群の間で、精神疾患再発、精神症状のコントロール、入院率において有意差は認められなかった。
・2種類の薬物療法と2種類の心理社会的治療の間にも、有意な相互作用は認められなかった。
・臨床効果不十分による治療中止は、LAI群よりも経口剤群でより多かった(χ21=6.1、p=0.01)。
・経口リスペリドンのアドヒアランスは、無作為化前と変わらないようであったが、リスペリドンLAIのアドヒアランスは、経口リスペリドンと比べて良好であった(t 80=5.3、p<0.001)。
・薬剤アドヒアランスは、症状悪化または再発の予防(χ21=11.1、p=0.003)、そしてブレークスルー精神症状のコントロールと関連していた(β=0.2、t 79=2.1、p=0.04)。
今回の結果を踏まえて、著者らは「統合失調症初回エピソード後のリスペリドンLAI使用は、臨床的アウトカムに対して顕著なアドバンテージがあった。疾患のより早期から、本剤形の使用が勧められる」とまとめている。
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(ケアネット)