不眠症の認知行動療法(CBT-I)は、不眠障害に対する最も優れた非薬物的治療である。その有効性について、原発性不眠症についてはメタ解析による検討が行われているが、併存不眠症に関する検討はほとんど知られていなかった。米国・ボストン大学のJade Q Wu氏らは、併存不眠症に対するCBT-Iの有効性を明らかにするため、無作為化臨床試験37件のメタ解析を行った。その結果、認知行動療法により不眠症状および睡眠パラメータの改善が認められた。また、併存疾患として内科的疾患よりも精神疾患を有する例で、より大きな効果が得られることを報告した。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2015年7月6日号の掲載報告。
研究グループは、 精神疾患や内科的疾患(またはその両方)に併存する不眠症に対するCBT-Iの有効性について、以下の評価を行った。(1)不眠症の寛解、(2)自己報告による睡眠効果、睡眠潜時、中途覚醒、総睡眠時間、主観的睡眠の質、(3)併存症状。2014年6月2日にPubMed、PsycINFO、Cochrane Libraryの系統的検索、および手動検索を実施した。検索に用いた用語は(1)CBT-I、CBT、認知行動療法(および類語)、行動療法((および類語]、行動睡眠医学、刺激制限療法、睡眠制限療法、弛緩療法、弛緩訓練、漸進的筋弛緩療法、逆説志向、のいずれか、および(2)不眠症、または睡眠障害とした。
試験の選択基準は、1つ以上のCBT-I群を含む無作為化臨床試験で、不眠症および併存症を有する成人患者を対象としているものとした。3人の研究者がそれぞれスクリーニングを行い、コンセンサスの得られた試験37件を最終解析の対象とした。データは2人の研究者が独立して抽出し、ランダム効果モデルを用いて統合した。試験の質はコクランリスクバイアス評価ツールを用いて2人の研究者が独立して評価した。主要アウトカムは睡眠と併存症の臨床的アウトカムとし、睡眠日誌および他の自己報告記録により導き出した。
主な結果は以下のとおり。
・治療後の評価において、CBT-Iを受けた患者の不眠症の寛解率は36.0%であったが、対照群あるいは比較治療群では16.9%であった (統合オッズ比:3.28、95%信頼区間[CI]:2.30~4.68、p<0.001)。
・治療前および治療後で調整したエフェクトサイズは、総睡眠時間を除くほとんどの睡眠パラメータにおいて中~大であった(睡眠効果:Hedges g 0.91[95%CI:0.74~1.08]、睡眠潜時:Hedges g 0.80[同:0.60~1.00]、中途覚醒:Hedges g=0.68、睡眠の質:Hedges g 0.84、すべてのp<0.001)。
・併存症アウトカムのエフェクトサイズは小さい傾向にあった(Hedges g 0.39[95%CI:0.60~0.98]、p<0.001)。
・症状の改善は内科的疾患患者より精神疾患患者のほうが大きかった(Hedges g 0.20[95%CI:0.09~0.30]、χ2 検定の交互作用=12.30、p<0.001)。
以上のように、不眠症に対する認知行動療法は、併存不眠症を有する患者の不眠症状および睡眠パラメータの改善に有効であった。併存症アウトカムにおいては小~中程度のポジティブな効果が認められ、精神疾患に伴う不眠症の場合のほうが内科的疾患に伴う不眠症に比べて効果が大きかった。エビデンスの質を高めるためには、さらに綿密にデザインされた、より大規模な研究が必要である。
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