統合失調症の同胞研究、発症と関連する脳の異常 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2015/08/26 先行研究において、統合失調症における構造的な脳結合性の異常が観察されている。それら異常の長期的なマッピングと、同胞研究による遺伝的リスクの理解は、統合失調症に関連する漸進的な発達的変化について重要な見識を与えてくれる。オーストラリア・メルボルン大学のAndrew Zalesky氏らは、小児期発症統合失調症(COS)の青年において発達過程の変化を示す皮質間結合を確認し、類似の変化が非罹患同胞にみられるかどうかを検討する前向き研究を行った。その結果、非罹患同胞の統合失調症発症に対するレジリエンスと関連する中間表現型を伴う後頭側頭部の結合性の成熟遅延が、COS患者の特徴的なマーカーであることが示唆されたことを報告した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2015年7月15日号掲の載報告。 今回研究グループが行った検討は、米国立精神衛生研究所(NIMH)の進行中のCOS研究の一部として、1991年1月1日から2011年4月30日まで20年以上にわたって行われたものであった。12~24歳のCOS患者109例(画像272枚)、非罹患同胞86例(画像184枚)、健常対照102例(画像262枚)において、皮質間結合性のマップを作成。皮質領域間の構造的結合性を、MRIから得られた皮質厚値等を用いて推定して検討を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・健常対照群と比較しCOS患者および非罹患同胞では、左後頭側頭部における皮質厚低下と結合性低下の有意な相関が認められた(p<0.05)。 ・非罹患同胞における皮質厚低下は青年期中期までに正常化したが、COS患者では明らかに長い成熟遅延を示した。 ・COS患者において、年齢に伴う皮質厚低下の正常化が症状改善と関連していた。 ・健常対照群と比較して、患者群のうち陽性症状が高度なサブグループ群では、14歳から18歳にかけて左後頭側頭部における皮質厚の相関が有意に減少したが(p<0.05)、陽性症状が低度の患者群では認められなかった。 結果を踏まえ、著者らは「これらの知見は、統合失調症の神経回路マップにおける遺伝的影響および結合性特異的発達異常を示しており、COS患者の幻視は後頭葉と側頭葉を結ぶ下縦束の発達遅延に起因している可能性があるという仮説につながる」とまとめている。 関連医療ニュース 統合失調症の発症に、大きく関与する遺伝子変異を特定 統合失調症患者の脳ゲノムを解析:新潟大学 うつ病のリスク遺伝子判明:藤田保健衛生大 担当者へのご意見箱はこちら (ケアネット) 原著論文はこちら Zalesky A, et al. JAMA Psychiatry. 2015 Jul 15. [Epub ahead of print] 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 前糖尿病の肥満へのチルゼパチド、糖尿病発症リスク93%減/NEJM(2024/11/22) 生後2年間のデジタル介入で肥満リスク低下/JAMA(2024/11/22) BRCA1/2病的バリアント保持者における乳がん後の二次原発がんリスク/JCO(2024/11/22) 家庭内のインフル予防、手指衛生やマスクは効果ある?~メタ解析(2024/11/22) 統合失調症患者に対する抗精神病薬の投与経路変更の影響は〜メタ解析(2024/11/22) 「週末戦士」でも脳の健康に利点あり(2024/11/22) 減量薬のアクセス拡大が年4万人以上の米国人の命を救う可能性(2024/11/22) 抗てんかん薬の早期処方が認知症リスクの低さと関連(2024/11/22) [ あわせて読みたい ] 全国在宅医療・介護連携研修フォーラム(2015/03/31) ひと・身体をみる認知症医療(2015/03/15) 診療よろず相談TV(2013/10/25) 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会 領域別セッション(2013/11/12) 「てんかんと社会」国際シンポジウム(2013/09/24)