なぜ高齢期うつ病は寛解率が低いのか 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2015/09/18 うつ病およびうつ症状は高齢者に高頻度に認められるが、潜在的に可逆的である。うつ病エピソードの治療における主な目標は完全回復である。高齢期のうつ病(DLL)患者を対象とした観察研究では、反応および寛解という観点において、臨床試験に比べ予後不良であることが示されているが、DLLの経過に関する観察研究はほとんどなかった。ノルウェー・Innlandet Hospital TrustのTom Borza氏らは、DLL患者を対象とした観察研究を行い、寛解または症状の改善に関する治療経過について検討した。その結果、うつ病エピソードの既往、健康状態不良、認知症の併存などが、寛解率の低さや症状改善が小さいことと関連していることを明らかにした。結果を踏まえて著者らは、「臨床医が治療の評価を行う際は、これらの因子にとくに注意を払うべきである」と述べている。BMC Psychiatry誌2015年8月5日号の掲載報告。 研究グループは、モンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)を用いて評価した反応、寛解、症状特異的な変化という観点からDLLの経過を検討し、反応と寛解に関連する臨床的変数を探索した。ノルウェーの専門医療サービスの高齢者精神科でうつ病治療を勧められた60歳以上の患者を対象とし、多施設前向き観察研究を行った。入院時から退院時までMADRSを用いて評価。エフェクトサイズ(ES)を算出し、治療期間中にMADRSのどの症状変化が最も大きいかを判定した。MADRSスコア(連続変数)の変化および寛解・反応(二値変数)の予測因子を評価するため、施設内のクラスター効果を調整した回帰モデルを推定した。 主な結果は以下のとおり。 ・入院期間中のMADRSは、平均値68、中央値53、最小値16、最大値301であった。 ・患者145例のうち、99例(68.3%)が治療に対し反応を示した(MADRSスコア50%以上の改善)。 ・74例(51.0%)に寛解(退院時のMADRSスコア9以下)が認められた。 ・治療期間中、MADRSの項目のうち「自己報告による悲しみ(ES=0.88)」「倦怠感(ES=0.80)」が最大の改善幅を示した。「集中困難(ES=0.50)」の改善幅が最小であった。 ・認知症の診断は、治療期間中の低い寛解率、MADRSスコアの改善が小さいことと関連していた。 ・健康状態不良は、低い反応率と関連した。 ・うつ病エピソードの既往は、低い寛解率と関連していた。 関連医療ニュース 注意が必要、高齢者への抗コリン作用 抗精神病薬の治療域、若年者と高齢者の差はどの程度か SPECT画像診断で大うつ病高齢者のSSRI有効性を予測:大分大 担当者へのご意見箱はこちら (ケアネット) 原著論文はこちら Borza T, et al. BMC Psychiatry. 2015;15:191. 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 前糖尿病の肥満へのチルゼパチド、糖尿病発症リスク93%減/NEJM(2024/11/22) 生後2年間のデジタル介入で肥満リスク低下/JAMA(2024/11/22) BRCA1/2病的バリアント保持者における乳がん後の二次原発がんリスク/JCO(2024/11/22) 家庭内のインフル予防、手指衛生やマスクは効果ある?~メタ解析(2024/11/22) 統合失調症患者に対する抗精神病薬の投与経路変更の影響は〜メタ解析(2024/11/22) 「週末戦士」でも脳の健康に利点あり(2024/11/22) 減量薬のアクセス拡大が年4万人以上の米国人の命を救う可能性(2024/11/22) 抗てんかん薬の早期処方が認知症リスクの低さと関連(2024/11/22) [ あわせて読みたい ] 全国在宅医療・介護連携研修フォーラム(2015/03/31) ひと・身体をみる認知症医療(2015/03/15) 診療よろず相談TV(2013/10/25) 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会 領域別セッション(2013/11/12) 「てんかんと社会」国際シンポジウム(2013/09/24)