インドを発祥とするヨガは古くからある精神修行であるが、現在では西洋でもリラクゼーションおよびエクササイズの1つの形態として受け入れられている。そうした中で、統合失調症患者に対する標準治療の補助療法としての有効性の評価が注目されている。アイルランドのセント・ジェームス病院Julie Broderick氏らは、統合失調症患者に対するヨガの補助療法としての有効性について検討した。検索により統合失調症患者を対象とし、ヨガと標準治療の比較を行っている8件の無作為化対照試験(RCT)をレビューした結果、限定的なサンプルサイズと6ヵ月以下の短期アウトカムではあったが、ヨガ群で良好な結果が示されたことを報告した。Cochrane Database Systematic Reviewsオンライン版2015年10月21日号の掲載報告。
Cochrane Schizophrenia Group Trials Register(2012年11月~15年1月29日)を検索し、参考文献についても検索も行った。言語、日付、記事形式、発行状況に関する制限は設けず、統合失調症患者を対象としヨガと標準治療の比較を行っている全RCTを検索対象とした。レビューチームが独立して試験を選択し、質のランク付けとデータ抽出を行った。バイナリアウトカムについて、リスク比(RR)および95%信頼区間(CI)をintention-to-treat を基本に算出。連続データについては、群間の平均差(MD)と95%CI値を算出。混合効果モデル、固定効果モデルを使用し分析した。不均質性(I2法)のデータ検証および対象試験のバイアスリスクを評価し、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)を用いて結果のサマリー表を作成した。
主な結果は以下のとおり。
・8件の試験についてレビューを行った。すべてが短期(6ヵ月以下)のアウトカムであった。
・多くのアウトカムで明確な差が認められ、ヨガ群に良好な結果が示された。ただし、各アウトカムはそれぞれ1件の試験に基づくものであり、それら試験において早期脱落例は除外されていた。
・精神状態(Positive and Negative Syndrome Scaleの改善、RCT 1件、83例、RR:0.70、95%CI:0.55~0.88、エビデンスの質は中等度)、社会的機能(Social Occupational Functioning Scaleの改善、1件、83例、RR:0.88、95%CI:0.77~1、中等度)、QOL(36-Item Short Form Survey[SF-36]のQOLサブスケールの平均変化、1件、60例、MD:15.50、95%CI:4.27~26.73、低い)、早期脱落(8件、457例、RR:0.91、95%CI:0.6~1.37、中等度)であった。
・身体的健康のアウトカムについては、明確な群間差は認められなかった(SF-36の身体的健康サブスケールの平均変化、1件、60例、MD:6.60、95%CI:-2.44~15.64、低い)。
・有害反応は1件の試験のみで報告されていたが、両群ともに有害事象の発生は認められなかった。
・本レビューでは、全身状態、認知機能変化、ケアのコスト、標準治療への影響、サービスの介入、身体障害、ADLなど、非常に多くのアウトカムが欠落していた。
・標準治療に対するヨガの優位性を示す複数のエビデンスが認められたが、アウトカムの大半が1件の試験に基づくものであり、サンプルサイズが限定的であること、フォローアップ期間が短期であるという点を慎重に考慮して再評価する必要がある。
・全体として、多くのアウトカムが未報告であり、本レビューで示されたエビデンスの質は低~中等度であり、これは、ヨガが統合失調症の管理において標準ケアと比較して有効であるとするには弱いものである。
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