ADHDに対するメチルフェニデートは有益なのか

提供元:ケアネット

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公開日:2016/01/06

 

 デンマーク・南デンマーク大学のOle Jakob Storeboe氏らは、小児および青少年の注意欠陥・多動性障害(ADHD)に対するメチルフェニデートの有益性と有害性を調査するため、コクラン・システマティックレビューを実施した。その結果、ADHDと診断された小児および青少年において、メチルフェニデートは教師の評価によるADHD症状と一般行動、ならびに保護者の評価による患児のQOLを改善する可能性があることが示唆された。しかし、解析に組み込まれた試験はバイアスリスクが高くエビデンスの質は非常に低かったことから、著者らは「メチルフェニデートの効果の大きさについてはまだ不明である」とまとめている。BMJ誌オンライン版2015年11月25日号の掲載報告。

 レビューは、ADHDの小児および青少年を対象に、メチルフェニデート群とプラセボ群または無治療群を比較した並行群間比較試験ならびにクロスオーバー無作為化比較試験を対象とした。2015年2月までに発表された論文を電子データベースで検索し、メタ解析と逐次解析(TSA)を実施した。GRADEシステムを使用しエビデンスの質を評価し、教師、保護者、観察者がADHD症状と一般行動を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・並行群間比較試験38件(5,111例、平均治療期間49日間)と、クロスオーバー試験147件(7,134例、同14日間)が解析に組み込まれた。
・試験全体の平均年齢は9.7歳であった。
・並行群間比較試験19件において、教師による症状の評価においてメチルフェニルデートの有効性が示唆された(標準化平均差[SMD]:-0.77、1,698例)。これはADHD評価スケールでは、平均差-9.6に相当する。
・メチルフェニデートは、重篤な有害事象の増加との関連は認められなかったが(リスク比:0.98、9件、1,532例、TSA補正リスク比:0.91)、非重篤有害事象のリスク増加と関連していた(リスク比:1.29、21件、3,132例、TSA補正リスク比:1.29)。
・教師による一般行動の評価は、メチルフェニデートによる改善を示唆するものであった(SMD:-0.87、5件、668例)。
・小児健康調査票(Child Health Questionnaire:CHQ)において、変化量7点が臨床的に重要な差の最小値と考えられた。
・3件のメタ解析で報告された変化は、CHQ(範囲0~100)で平均差8.0点に相当し、このことがメチルフェニデートは親によるQOLの評価を改善する可能性があることを示唆した(SMD:0.61、3件、514例)。
・コクランのガイドラインに基づき、分析対象の臨床試験の96.8%はバイアスリスクが高いと考えられた。また、GRADEシステムにより、すべてのアウトカムの質が非常に低かった。

(鷹野 敦夫)

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