てんかん発症患者は非発症者と比べて、てんかん診断前でも初回自殺企図のリスクが2.9倍高く、また再発リスクも1.8倍高いことが、米国・コロンビア大学のDale C. Hesdorffer氏らによる、住民ベースの後ろ向きコホート研究の結果、明らかにされた。JAMA Psychiatry誌2016年1月号の掲載報告。
先行研究で、てんかん患者は自殺リスクが5倍高いことが示されているが、自殺企図に関してや、精神障害や抗てんかん薬が自殺企図リスクに影響を及ぼすかどうかは、ほとんど明らかとなっていない。そこで研究グループは、自殺企図とてんかんとの関連の程度を評価するため、てんかん診断以前に初回の自殺企図および2回目の自殺企図(自殺企図の再発)を試みた患者(症例患者)と、てんかんを認めず初回および再発の自殺企図がみられた患者(対照患者)を比較する検討を行った。また、同関連について、精神障害の併存、および抗てんかん薬処方の除外による影響についても評価した。検討は、住民ベースの後ろ向きコホート研究にて、英国のClinical Practice Research Datalinkを用いて、一般診療を受けている人から症例患者と対照患者を特定して行った。症例患者は1987~2013年に診断を受けた10~60歳。対照患者は、各症例患者のてんかん診断日以前にてんかんの診断を受けていない、誕生年、性別、一般診療を適合させた各4例(症例患者1例に対し、対照患者4例)を無作為に選定した。主要評価項目は、症例患者と対照患者の初回自殺企図および自殺企図再発のハザード比(HR)であった。
主な結果は以下のとおり。
・症例患者1万4,059例(年齢中央値:36歳)vs.対照患者5万6, 184例(同36歳)において(年齢範囲は両群とも10~60歳)、症例患者のてんかん診断前における初回自殺企図リスクは2.9倍(95%信頼区間[CI]:2.5~3.4)高率であった。
・症例患者278例(年齢中央値:37歳)vs.対照患者434例(同35歳)において(年齢範囲は両群とも10~61歳)、症例患者のてんかん診断前における自殺企図再発リスクは1.8倍(95%CI:1.3~2.5)高率であった。
・診断日以前の抗てんかん薬処方を除外しても、結果に意味のある変化は認められなかった。
・精神障害の有無別の解析でも、結果に意味のある変化は認められなかった。
著者らは、「てんかんと自殺企図およびその再発の関連が発症前でもみられたことは、両者の生物学的基盤が共通していることを示唆するものである」と述べ、「自殺企図およびその再発は、抗てんかん薬の服用がなくても、また精神障害の診断がなくても関連がみられ、機序は不明だが病因が共通しているとのエビデンスを強化する所見が示された」とまとめている。
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