認知症高齢者に対する抗精神病薬使用は、安全規制により最近10年間で減少しているが、依然として使用率は高い。地理的条件差異が、臨床診療の相違や行動症状の管理のためのエビデンスに基づくガイドラインの遵守の欠如に影響している可能性がある。デンマーク・コペンハーゲン大学のJohanne Kobstrup Zakarias氏らは、認知症ケアにおける抗精神病薬使用の地理的条件差異について調査した。Journal of Alzheimer's disease誌オンライン版2016年8月24日号の報告。
2012年のデンマーク全国高齢者(65歳以上)レジストリデータベースの横断的研究。データには、住所、処方箋、退院診断が含まれた。抗精神病薬使用の認知症高齢者3万4,536例と認知症でない高齢者93万1,203例は、年齢と性別を調整した後、デンマークの5地域、98自治体で比較を行った。
主な結果は以下のとおり。
・2012年の抗精神病薬使用の認知症高齢者は20.7%、全体の3.9%であった。
・抗精神病薬使用率は、5地域で17.0~23.3%、98自治体で7.5~33.1%の範囲であり、その差は4倍以上であった。
著者らは「地理的条件差異は、地域レベルよりも市町村レベルでより顕著であり、プライマリケアにおける実臨床が、この差異と関連している可能性が示唆された。認知症高齢者に対する薬理学的管理だけでなく非薬理学的介入を実施するためのプロフェッショナルな介護者や医師を育成することが緊急に必要であることを示唆している。」としている。
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