抗うつ薬の有害事象、学術論文を鵜呑みにしてよいのか 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2016/10/13 これまでの研究によると、抗うつ薬の有効性は、報告バイアスにより誇張されていることが示唆されている。オランダ・フローニンゲン大学のYmkje Anna de Vries氏らは、抗うつ薬の安全性についても影響があるかを検討した。European neuropsychopharmacology誌オンライン版2016年9月19日号の報告。 解析には、FDAのレビューから得られたうつ病または不安障害に対する第2世代抗うつ薬の試験133件(3万1,296例)を用いた。全中断、有害事象および重篤な有害事象による中断に関するデータを抽出した。重篤な有害事象は質的に比較しながら、FDAレビューとマッチした学術論文との中止率を比較するため、メタアナリシスを用いた。 主な結果は以下のとおり。 ・全中断のオッズ比は、プラセボと比較し1.0であったが、有害事象による中断のオッズ比は、2.4であった。 ・97件中77件(79%)の学術論文は、情報提供が不完全であり、61件(63%)は、すべての重篤な有害事象について言及していなかった。 ・FDAと比較可能な21件の論文のうち、6件(29%)は、矛盾のない完全な報告であった。 ・9件(43%)は、重篤な有害事象数が矛盾する報告であった。 ・自殺企図のような重要な重篤な有害事象についての記述がない、または矛盾した記述であった論文は6件(29%)であった。 結果を踏まえ、著者らは「報告バイアスは、試験の平均中止率に対し影響を及ぼしていない。しかし、重篤な有害事象の報告は、半数以上の論文で非常に劣っているだけでなく、一般的にFDAレビューと異なっており、多くの場合、プラセボと比較しより良好な報告であった。これらの知見より、学術論文による抗うつ薬試験の重篤な有害事象データは、鵜呑みにできないことが示唆された」としている。 関連医療ニュース 抗うつ薬治療患者に対するベンゾジアゼピン投与の安全性は:藤田保健衛生大 抗うつ薬による治療は適切に行われているのか?:京都大学 日本人うつ病患者、抗うつ薬維持量に影響する因子:静岡県立大 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら de Vries YA, et al. Eur Neuropsychopharmacol. 2016 Sep 19. [Epub ahead of print] 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] マラリア対策のための高解像度地図の最新版、COVID-19の影響は?/Lancet(2025/04/02) 2型DMへの自動インスリン投与システム、HbA1c値を改善/NEJM(2025/04/02) 胃がんT-DXd、日本における販売後調査の最終解析/日本胃癌学会(2025/04/02) 閉塞性肥大型心筋症へのmavacamten、長期有効性・安全性の中間解析(HORIZON-HCM)/日本循環器学会(2025/04/02) 腸管GVHDの発症・重症化および予防・治療における腸内細菌叢の役割/日本造血・免疫細胞療法学会(2025/04/02) OTC薬の乱用と精神症状発症リスクとの関係(2025/04/02) 「血痰は喀血」、繰り返す喀血は軽症でも精査を~喀血診療指針(2025/04/02) [ あわせて読みたい ] Dr.松崎のここまで!これだけ!うつ病診療 (2016/03/07) 薬剤性QT延長症候群とは(2015/09/30) 全国在宅医療・介護連携研修フォーラム(2015/03/31) ひと・身体をみる認知症医療(2015/03/15) 診療よろず相談TV(2013/10/25) 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会 領域別セッション(2013/11/12) 「てんかんと社会」国際シンポジウム(2013/09/24) 柏市 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会(2013/06/24) 松戸市 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会(2013/06/20)