うつ病治療における機能とQOLのアウトカムの重要性は認識されているが、メタ解析のエビデンスはほとんどない。スペイン・Instituto de Salud Carlos III、Centro de Investigacion Biomedica en RedのK Kamenov氏らは、うつ病患者の機能とQOLに関する精神療法、薬物療法、それらの組み合わせについて、絶対的および相対的な効果を評価するため、無作為化比較試験(RCT)のメタ解析を行った。Psychological medicine誌オンライン版2016年10月26日号の報告。
Pubmed、PsycINFO、Cochrane Central Register of Controlled Trialsのデータベース検索より、試験結果153件、うつ病患者2万9,879例を抽出した。
主な結果は以下のとおり。
・コントロール群と比較し、精神療法および薬物療法は、機能およびQOLへのエフェクトサイズが軽度から中程度であった(g=0.31~0.43)。
・直接比較すると、初期分析では、どちらが優れているかのエビデンスは得られなかった。
・出版バイアスで調整した後、精神療法はQOLに対し、薬物療法よりも効果的であった(g=0.21)。
・精神療法と薬物療法の併用は、機能およびQOLに対し、各治療単独群の軽度なエフェクトサイズと比較し、有意に良好であった(g=0.32~0.39)。
・いずれの介入も、機能およびQOLよりも、うつ症状の重症度を改善した。
著者らは「いくつかの分析の比較試験数が少ないにもかかわらず、精神療法、薬物療法単独群においても機能およびQOLの改善に有効であることが示された。本研究では単独療法よりも併用療法が優れることが明らかとなった。全体的に中程度の効果であったことから、今後は、機能およびQOLの問題を抱えるうつ病患者に対し、個人のニーズをより満たすための治療を行うことが求められる」としている。
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