統合失調症患者は、一般集団と比較し、異常な自律神経系(abnormal autonomic nervous system:ANS)の活性を有する。この理由の1つとして、抗精神病薬のムスカリン親和性があり、ムスカリン受容体遺伝子の一塩基多型が、ANS機能不全に影響を及ぼすといわれている。横浜市立大学のmasatoshi miyauchi氏らは、抗精神病薬が投与されている統合失調症患者のANS活性に対するコリン作動性ムスカリン性受容体(cholinergic muscarinic receptor:CHRM)遺伝子の一塩基多型の影響を検証した。Neuropsychobiology誌2016年12月7日号の報告。
対象は、日本の統合失調症患者173例。心拍変動をANS活性の指標として測定した。CHRM1(rs542269、rs2075748)、CHRM2(rs324640、rs8191992、rs1824024、rs7810473)、CHRM3(rs3738435、rs4620530、rs6429157)の一塩基多型は、TaqMan法を用いて遺伝子解析を行った。標準的なクロルプロマジン(CP)換算に従って、高CP群(1,000mg以上)と低CP群(1,000mg未満)に患者を分類し、ANS活性の群間比較を行った。患者の心拍変動のトータル、LF(low-frequency)、HF(high-frequency)、LF/HF成分、高CP群と低CP群の両方の一塩基多型遺伝子を比較した。Bonferroni補正には多重比較を適用し、臨海p値は<0.005とした。
主な結果は以下のとおり。
・高CP群におけるCHRM2 rs8191992多型のAアレルは、ANS活性の低下と関連していた。
著者らは「統合失調症患者に対する抗精神病薬の高用量投与は、CHRM2 rs8191992多型と関連するANS活性の低下を示す。CHRM2多型は、統合失調症患者のANS活性に対し、重要な役割を果たす可能性がある」としている。
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(鷹野 敦夫)