性行為前にアルコールを摂取すると、無防備な性行為、複数の性行為相手、性感染症の可能性を高める。また、境界性パーソナリティ障害(BPD)は、物質使用障害や性的リスク行動と関連する。BPDは、情緒調節、自己イメージ、対人関係、衝動性制御における広範な不安定性を特徴とする複雑な精神障害である。しかし、米国におけるBPDと性行為前のアルコール摂取との関連についての研究は行われていない。米国・コロンビア大学のRonald G Thompson氏らは、全米の代表的な成人サンプルにおける、BPDと性行為前の定期的なアルコール摂取との関連を調査した。Drug and alcohol review誌オンライン版2017年3月20日号の報告。
対象は、アルコールおよび関連状態に関する全米疫学調査Wave2より、現在性的関係を持っている飲酒者1万7,491例。コントロールにより調整された、性行為前の定期的(大半または常に)なアルコール摂取の可能性をカウントし、BPD診断、特定のボーダーライン診断基準、BPD基準への影響を、ロジスティック回帰モデルで推定した。
主な結果は以下のとおり。
・BPD診断は、性行為前の定期的なアルコール摂取の割合を2倍にした(調整OR:2.26、CI:1.63~3.14)。
・9つの診断基準のうち、自傷行為における衝動性は、性行為前の定期的なアルコール摂取の有意な予測因子であった(調整OR:1.82、CI:1.42~2.35)。
・性行為前の定期的なアルコール摂取のオッズ比は、各推奨基準に対して20%増加していた(調整OR:1.20、CI:1.14~1.27)。
著者らは「本検討は、米国におけるBPDと性行為前の定期的なアルコール摂取との関連を調査した最初の研究である。物質乱用治療では、とくにBPD患者において性行為前の定期的なアルコール摂取を評価すべきである。BPD治療では、衝動性、性行為、物質使用を横断的にリスク評価する必要がある」としている。
関連医療ニュース
神経性過食症と境界性パーソナリティ障害との関連
抗精神病薬の性機能障害、プロラクチンへの影響を比較
境界性パーソナリティ障害併発、自殺に対する影響は
(鷹野敦夫)