ALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の標準的1次治療は第1世代のALK‐TKIであり、優れた成績をあげている。しかし、時間経過とともにPDとなる患者も存在する。また、中枢神経系(CNS)転移は再発時に多く発現し、治療困難で、しばしば臨床上の問題となる。
アレクチニブは、強力な活性とCNSへの良好な移行性を有する次世代ALK-TKIであり、第1世代ALK‐TKIクリゾチニブ治療耐性症例において非常に優れた成績を示している。また、当患者集団の1次治療においては、アレクチニブ(300mg×2/日)とクリゾチニブを初めて直接比較した本邦のJ-ALEX試験で、アレクチニブ群が主要評価項目であるPFSを有意に改善している(HR:0.34、p<0.0001)。本年の米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO2017)では、進行ALK陽性NSCLCの1次治療におけるアレクチニブとクリゾチニブを直接比較した、グローバル第III相試験ALEX試験の結果を、米国Massachusetts General HospitalのAlice Shaw氏が報告した。
この多施設オープンラベル無作為化第III相試験の対象患者は、無症候性のCNS転移症例を含む未治療の進行ALK陽性NSCLC。登録された患者は無作為に、アレクチニブ600mg×2/日またはクリゾチニブ250mg×2/日に1:1で割り付けられた。主要評価項目は治験担当医評価(INV)による無増悪生存期間(PFS)。副次評価項目は、独立評価委員会(IRC)によるPFS、CNS無増悪期間(CNS TTP)、客観的奏効率(ORR)、全生存期間(OS)、奏効期間、安全性などであった。
結果、2017年2月9日のデータカットオフ時に303例が登録された(アレクチニブ152例、クリゾチニブ151例)。追跡期間はアレクチニブ群18.6ヵ月、クリゾチニブ群17.6ヵ月であった。患者の半数以上(アレクチニブ群55%、クリゾチニブ群54%)は非アジア人で、約60%が非喫煙者、また約40%がベースライン時にCNS転移を有していた。
主要評価項目であるINVによるPFSは、アレクチニブ群で未達(17.7~NE)、クリゾチニブ群では11.1ヵ月(9.1~13.1)と、アレクチニブ群で有意に延長した(HR:0.47、95%CI:0.34~0.65、p<0.0001)。副次評価項目であるIRCによるPFSは、アレクチニブ群で25.7ヵ月(19.9~NE)、クリゾチニブ群は10.4ヵ月(7.7~14.6)で、こちらもアレクチニブ群に有意であった(HR:0.50、95%CI:0.36~0.70、p<0.0001)。
CNS転移例におけるPFSはアレクチニブ群では未達、クリゾチニブ群では7.4ヵ月であった(HR:0.40、95%CI:0.25~0.64)。CNS TTP(中央値は両群とも未達)は、競合リスクモデルを用いた生存時間解析において、アレクチニブ群で有意に延長した(cause specific HR:0.16、95%CI:0.10~0.28、p<0.0001)。
ORRは、アレクチニブ群83%(76~89)、クリゾチニブ群76%(68~82)で、アレクチニブ群が長かったが、統計学的に有意ではなかった(p=0.09)。OSは両群とも未達であった(HR:0.76、95%CI:0.48~1.20、p=0.24)。
Grade3~5の有害事象(AE)は、アレクチニブ群の41%、クリゾチニブ群の50%で発現した。致死的AEの発現率はアレクチニブ群で3%、クリゾチニブ群では5%であった。AEの発現項目は両群共新たなものはなかった。
Shaw氏は、このALEX試験の結果は、ALK陽性NSCLCの1次治療の新たな標準としてのアレクチニブの位置付けを確立した、と述べて本題を締めくくった。
■参考
ASCO2017 Abstract
ALEX試験(ClinicalTrials.gov)
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(ケアネット 細田 雅之)