入院をためらう親を納得させるセリフ~RSウイルス感染症

提供元:ケアネット

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公開日:2017/08/18

 

 2017年8月3日、アッヴィ合同会社は、都内でRSウイルス感染症啓発のプレスセミナーを開催した。例年RSウイルス感染症は秋~早春にかけて流行するが、2017年は春先から初夏にかけて感染者の報告があり、今回、注意喚起のため開催された。

 セミナーでは、本症の診療概要などのレクチャーのほか、実子が本症に感染した経験を持つ鈴木 おさむ氏(放送作家・タレント)を迎えてトークセッションも行われた。

例年の流行パターンではない2017年

 はじめに「子どもを持つ親御さんに知ってほしいこと~子どものRSウイルス感染症~」をテーマに今川 智之氏(神奈川県立こども医療センター感染免疫科 部長)が、疾患の概要とアッヴィ社が実施したアンケート調査の結果について説明を行った。

 RSウイルス感染症は、感染動向調査の小児科定点把握であり、5類感染症に指定される小児科領域に多い感染症。従来、晩秋~早春が感染の流行時期だったものが、ここ数年来、流行時期が徐々に早くなっており、本年はすでに感染した患児が報告されている。

 潜伏期は2~8日、生後1歳までに50%以上が、2歳までにほぼ100%が初感染をする。風疹のように免疫獲得はなく、成人でも再感染はあるが、症状が比較的軽微であり風邪と間違われやすい。

 主な症状として40℃近い発熱、鼻汁、咳嗽など上気道症状が出現し、初回の感染が重症化しやすく、約20~30%で気管支炎や肺炎などの下気道症状へ進展するとされる。乳幼児の肺炎の約50%、細気管支炎の約50~90%がRSウイルス感染症との報告もある。

 とくにハイリスク群として新生児、生後6ヵ月以内の乳児、早産児、(月齢24ヵ月以内の)免疫不全児、ダウン症児、高齢者が挙げられ、注意が必要という。

 診断は、(小児のみ保険適用の)迅速検査とX線検査で行われ、治療では、抗ウイルス薬がないため、主に諸症状への対症療法となる。なお、ダウン症児などのハイリスク患児を対象にした抗体であるパリビズマブ(商品名:シナジス)もあるが、適応はかなり限定されている。

 そこで感染予防が重要となるが、本症の感染は、飛沫感染と接触感染の2つの経路がある。とくに家庭内や保育園、学校など集団内での感染が多く、咳へのマスク使用、手指消毒など、家族で感染対策を行うことが大切だという。
 

本症の親の認知度は約40%

 同社が行った「RSウイルス感染症・子どもの健康に関する意識調査」(実施:2017年6月、対象:2歳未満の子どもを持つ親1,800名)によれば、本症を知っている親は約40%と、百日咳、プール熱(咽頭結膜熱)とほぼ同じ程度だった。また、本症の認知度について保育施設利用者(55.2%)と非利用者(30.1%)では利用者のほうが25.1ポイントも多く、親同士のネットワークにより知識が拡散されていることがうかがわれた。本症の流行時期に関しては、「RSウイルスの流行時期が秋~春だけではなく、夏にもみられる」ことを知らないと答えた割合が半数以上の54.5%と、夏の流行への認識不足も読み取れた。

入院を勧める場合の説明法

 後半では、「家庭内で知っておくべき知識と予防策」をテーマに、今川氏と鈴木 おさむ氏のトークセッションが行われた。

 鈴木氏のお子さんが、昨夏に本症を発症。41℃近い発熱と咳をしたことでRSウイルス検査を受け、本症と確定診断された。そのときの経験から、本症について親として知っておくべきこと、感染予防での子どもへの接し方、医師との付き合い方などを、親の目線から語った。

 とくに患児の重症度について両氏は、親が医師に聞きたい場合、「子供が先生のお子さんなら入院させますか?」という尋ね方は、的確な回答がもたらされる良い質問法であり、逆に医師が親に患児の入院を勧める場合、「私の子供なら入院させます」という説明は、親に重症の度合いを理解してもらう良い説明法であると語った。

 また、本症の啓発について鈴木氏は「患児を持った親が情報を拡散していくことが大事。親もWEBやSNSで調べる時代なので、経験者の情報が後で役立つ」と述べた。

 本症全般について今川氏は、「医師は、本症の流行時期に夏も考慮に入れ、診療時に思いつくことが大事。また、親御さんも風邪だと簡単に片付けず、高熱やひどい咳をお子さんがしていたら診療を受けさせること。その際、感染症などの既往歴、予防接種の有無、普段服用のお薬など、お子さんの情報は診療の参考になるので、お母さんだけでなく、お父さんもきちんと知っていてほしい」と思いを語り、トークセッションを締めた。

■参考
RSウイルス感染症・子どもの健康に関する意識調査

(ケアネット 稲川 進)