抗精神病薬誘発性遅発性ジスキネジアのためのコリン作動薬 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2018/04/13 遅発性ジスキネジア(TD)は、従来型の抗精神病薬による薬物療法における副作用である。TDは、中枢のコリン作動性欠損によるものであるといわれており、TDの治療には、コリン作動薬が使用される。フィンランド・Helsinki City HospitalのIrina Tammenmaa-Aho氏らは、統合失調症または他の慢性的な精神疾患患者における抗精神病薬誘発性TD治療のためのコリン作動薬の効果について検討を行った。The Cochrane database of systematic reviews誌オンライン版2018年3月19日号の報告。 2015年7月16日~2017年4月にコクラン統合失調症グループ研究ベースレジストリより研究を検索した。このレジストリは、多くの電子データベース、治験レジストリ、会議の議事録や論文のランダム化比較試験(RCT)のために構成されている。抽出されたすべての研究の参考文献を検索し、さらなる試験引用を行った。コリン作動薬またはプラセボまたは非介入のいずれかにランダム化された、抗精神病薬誘発性TDおよび慢性的な精神疾患患者を対象とした対照研究かを調査したうえで、報告に含めた。試験の方法論的質は、2人のレビューアーが独立して評価した。2人のレビューアーがデータを抽出し、95%信頼区間(CI)で推定リスク比(RR)、平均差(MD)を可能な限り算出した。早期に離脱した患者は、改善がなかったと判断し、治療の意図(intention-to-treat)に基づきデータを分析した。バイアスリスクを評価し、GRADEを用いて調査結果の概要テーブルを作成した。 主な結果は以下のとおり。 ・1976~2014年に発表されたコリン作動薬のプラセボ比較試験14研究を抽出した。 ・すべての研究の参加者は、少数(5~60例)であった。 ・このアップデートにおいて、TD治療のための新規コリン作動性アルツハイマー病治療薬に関する3件の研究が初めて含まれた。 ・全体として、抽出された研究のバイアスリスクは不明であった。主に報告が不十分で、割り付けの隠蔽は記載されておらず、順番の生成(割り付けの制限)は明白ではなかった。研究は、明確に盲検化がなされておらず、データが不完全であるかどうかは不明で、不十分または選択的な報告であった。 ・プラセボと比較し、TD症状の臨床的な改善に対する新旧コリン作動薬の効果については不明であり、エビデンスの質は非常に低かった(RR:0.89、95%CI:0.65~1.23、27例、4RCT)。 ・8試験において、コリン作動薬がTD症状の悪化に対し、ほとんどまたはまったく差がないことが確認された。しかし、エビデンスの質は低かった(RR:1.11、95%CI:0.55~2.24、147例)。 ・精神症状(RR:0.50、95%CI:0.10~2.61、77例、5RCT)、有害事象(RR:0.56、95%CI:0.15~2.14、106例、4RCT)、研究からの早期離脱(RR:1.09、95%CI:0.56~2.10、288例、12RCT)への影響についても、非常にエビデンスの質は低いため、不確実であった。 ・社会的な信頼、社会的インクルージョン、社会的ネットワーク、個人のQOLに関する研究は報告されていなかった。 著者らは「TDは、公衆衛生上の主要な問題である。アルツハイマー病の治療薬として使用されている新旧コリン作動薬の臨床効果は不明であり、あまりにも少数の研究のため、疑問点が解決されていない。臨床医にとって、コリン作動薬は興味深い薬剤であるべきだが、臨床研究はあまり行われていない。しかし、現在アルツハイマー病の治療に使用されている新規コリン作動薬の登場により、より有用な臨床研究が行われる余地がある。これらの新規コリン作動薬によるTD患者治療のための調査を行う際には、よくデザインされた大規模なランダム化試験を実施し、その効果を報告することが求められる」としている。 ■関連記事 薬剤誘発遅発性ジスキネジアを有する統合失調症患者へのアリピプラゾール切り替え 遅発性ジスキネジア治療に期待される薬剤は 統合失調症患者の抗コリン薬中止、その影響は (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Tammenmaa-Aho I, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2018 Mar 19. [Epub ahead of print] 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) 関連記事 遅発性ジスキネジア治療剤の新薬ジスバルカプセル40mg発売/田辺三菱 医療一般(2022/06/14) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 前糖尿病の肥満へのチルゼパチド、糖尿病発症リスク93%減/NEJM(2024/11/22) 生後2年間のデジタル介入で肥満リスク低下/JAMA(2024/11/22) BRCA1/2病的バリアント保持者における乳がん後の二次原発がんリスク/JCO(2024/11/22) 家庭内のインフル予防、手指衛生やマスクは効果ある?~メタ解析(2024/11/22) 統合失調症患者に対する抗精神病薬の投与経路変更の影響は〜メタ解析(2024/11/22) 「週末戦士」でも脳の健康に利点あり(2024/11/22) 減量薬のアクセス拡大が年4万人以上の米国人の命を救う可能性(2024/11/22) 抗てんかん薬の早期処方が認知症リスクの低さと関連(2024/11/22) [ あわせて読みたい ] Dr.大塚の人生相談(2024/02/26) IBD(炎症性腸疾患)特集(2023/09/01) 旬をグルメしながらCVIT誌のインパクトファクター獲得を祝福する【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第63回(2023/08/29) エキスパートが教える痛み診療のコツ(2018/10/11) 医療者向け『学校がん教育.com』(2022/12/01) アトピー性皮膚炎・乾癬特集まとめインデックス(2022/11/11) アトピー性皮膚炎・乾癬特集まとめインデックス(2022/11/11) 診療所売買に関心がある方に!マンガ連載をまとめた冊子プレゼント【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第43回(2022/10/17) 今考える肺がん治療(2022/08/24) あなたにとって、開業の「成功」「失敗」とは?【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第42回(2022/08/09)