せん妄は、高齢者の死亡率増加に関連している。英国内のガイダンスでは、すべての認知症入院患者に対してせん妄スクリーニングが推奨されているが、その検討は行われていなかった。英国・South London and Maudsley NHS Foundation TrustのDavid Codling氏らは、認知症入院患者に対するせん妄スクリーニングの影響について検討を行った。Aging & Mental Health誌オンライン版2020年2月21日号の報告。
認知症入院患者に対するせん妄スクリーニングは死亡率低下と関連
第3次認知症全国調査に参加したイングランドおよびウェールズの199施設に入院した1万47例を対象に、データの2次分析を行った。入院中に死亡した認知症患者に関するデータを、生存している患者のデータと比較した。せん妄スクリーニング、認知機能テストを行った患者の死亡率を算出し、せん妄患者では専門医の臨床レビューを行った。
認知症入院患者に対するせん妄スクリーニングの影響について検討した主な結果は以下のとおり。
・認知症患者の平均年齢は84±7.9歳、男性の割合が40.1%、英国人の割合が82.1%であった。
・入院中に死亡した患者は、1,285例(12.8%)であった。
・せん妄スクリーニングを実施した認知症患者は4,466例(44.5%)であり、そのうち2,603例(58.6%)が陽性であった。
・せん妄スクリーニング(OR:0.79、95%CI:0.69~0.90)および認知機能テスト(OR:0.71、95%CI:0.61~0.82)を実施した認知症患者の死亡率は低かった。
著者らは「認知症入院患者に対するせん妄スクリーニングおよび認知機能テストの実施は、死亡率の低下と関連していることが示唆された。これらの関連性が因果関係であるかは不明だが、本所見は、認知症入院患者に対するせん妄スクリーニングのレベル向上のために行われている努力を支持するものである」としている。
(鷹野 敦夫)