片頭痛の隠れた経済的影響~英国政府のコスト分析

提供元:ケアネット

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公開日:2023/12/06

 

 片頭痛は、15~49歳の人々において世界的に最も高い疾患負担をもたらす疾患であり、行動不能に陥る可能性のある精神疾患である。欧州における片頭痛有病率は、北米、南米、中央アフリカに次いで4番目に高く、アジアやアフリカよりも高いといわれている。片頭痛による直接的な医療費は比較的少額であるものの、生産性の低下による間接的な経済的影響は大きい。オランダ・フローニンゲン大学のRui Martins氏らは、片頭痛の経済的負担について、政府のコストの観点から検討を行った。Journal of Health Economics and Outcomes Research誌2023年10月3日号の報告。

 片頭痛の経済的負担は、政府コストの観点を適用した分析財政モデリングのフレームワークを用いて、英国一般人口と比較し、推定した。就労に対する片頭痛の影響に関する公表された測定値は、一般人口の経済活動率/非活動率を用いた。本モデルでは、ライフコースにわたる雇用からの収入、負担した直接税および間接税、財政的支援の生涯にわたる変化を推定した。片頭痛の影響を受ける人とそうでない人における差異は、純財政上の影響としての公的会計に、財政コストは、20年にわたる英国の年間コホート全体の1人当たりの割引平均として報告されている。

 主な結果は以下のとおり。

・片頭痛の影響を受けている人は、欠勤、失業、障害者、早期退職となる可能性が高かった。
・44歳の片頭痛患者は、非片頭痛患者と比較し、英国政府に対し1万9,823ポンドの過剰な財政コストをもたらしており、片頭痛を抱えながらの生活は、年間1,379ポンド相当の影響を及ぼしていることが推定された。
・片頭痛は、公共経済に対し年間122憶ポンドの影響を及ぼしており、これは片頭痛1件当たり約130.63ポンドであると推定された。
・本モデルでは、医療および社会福祉労働者の年間生産性損失を20億5,000万ポンド、年間生産性損失の合計は58憶1,000万ポンドを超えると推定した。

 著者らは「本財政分析により、税収の損失と支出の両方の観点から、英国政府のコストにおける片頭痛に関連する就労上の影響が明らかとなった。本結果は、疾患重症度を特徴づけ、医療技術の費用対効果を評価検討するうえで、意思決定者にとって役立つであろう」としている。

(鷹野 敦夫)