経口PNH治療薬ボイデヤ、C5阻害薬との併用で製造販売承認を取得/アレクシオン

提供元:ケアネット

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公開日:2024/01/25

 

 アレクシオンファーマは1月19日付のプレスリリースで、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療薬として、経口補体D因子阻害薬ボイデヤ(一般名:ダニコパン)の製造販売承認を取得したことを発表した。本剤の効能または効果は「発作性夜間ヘモグロビン尿症」であり、「補体(C5)阻害剤による適切な治療を行っても十分な効果が得られない場合に、補体(C5)阻害剤と併用して投与すること」としている1)

 PNHは、血管内溶血(IVH)として知られる血管内の赤血球破壊を主な病態とする重度の希少血液疾患であり、臓器障害や早期死亡に至る可能性がある2-4)。治療においては、C5阻害薬であるユルトミリス(一般名:ラブリズマブ)またはソリリス(同:エクリズマブ)が終末補体を抑制することで、症状および合併症を軽減し、患者の生存率に影響することが期待されている4-7)。しかし、C5阻害薬を投与中のPNH患者の約10~20%には、臨床的に問題となる血管外溶血(EVH)が顕在化し、持続的な貧血症状から定期的な輸血が必要となることがある2, 8-11)。ボイデヤは、このような特定のPNH患者のニーズに対応すべく、ユルトミリスまたはソリリスと併用投与する薬剤として開発されたファースト・イン・クラスの薬剤である。

 今回の承認は、Lancet Haematology誌に掲載された、成人PNH患者を対象とした国際共同第III相試験「ALPHA試験」(検証的試験)から得られた肯定的な結果に基づく12)

 ALPHA試験において、臨床的に問題となるEVHを示す成人PNH患者を対象に、ユルトミリスまたはソリリスにボイデヤを併用した際の有効性および安全性が評価された。その結果、プラセボ群と比較した投与12週時点のヘモグロビンのベースラインからの変化量という主要評価項目の達成のほか、輸血回避および慢性疾患治療の機能的評価-疲労(FACIT-Fatigueスケール)スコアの変化量を含む、主な副次評価項目を達成した。ボイデヤは概して良好な忍容性を示し、新たな安全性の懸念は示されなかった。本試験で最も多く報告された有害事象は、頭痛、悪心、関節痛および下痢だった12)
※ヘモグロビンが9.5g/dL以下かつ網状赤血球数が120×109/L以上と定義

 大阪大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学 招聘教授の西村 純一氏は、「ALPHA試験では、ボイデヤをユルトミリスまたはソリリスと併用投与することで、IVHを抑制しながらヘモグロビン値が改善され、輸血の必要性が軽減されました。今回の承認取得により、C5阻害薬を継続しながら、体へ負担のかかるEVH症状を呈する患者さんの転帰を改善することが期待されます」と述べている。

 また、Alexion(米国)のマーク・デュノワイエ最高経営責任者(CEO)は、次のように述べている。「20年を超えるPNH研究により、この希少疾患を効果的に治療するうえでのC5阻害薬の役割が強固なものとなり、私たちはこの疾患を持つ患者さんのために引き続き革新を起こしてまいります。C5阻害薬へ追加投与されるボイデヤは、すでに確立されている治療を中断することなく、臨床的に問題となるEVHの影響を受けている患者さんのニーズに対応するという当社の決意を示しています。日本において、この症状を有するPNH患者さんに新たな進展をお届けできると期待しています」。

 ボイデヤは、米国食品医薬品局よりブレークスルーセラピーの指定を、欧州医薬品庁よりPRIority MEdicines(PRIME)の指定を受けている。また、本剤は米国、欧州、日本において、PNHの治療薬として希少疾病用医薬品の指定を受けている。

■参考文献
1)電子添付文書「ボイデヤ錠50mg」2024年1月作成(第1版)
2)Brodsky RA. Blood. 2014;124:2804-2811.
3)Griffin M, et al. Haematologica. 2019;104:e94-e96.
4)Hillmen P, et al. N Engl J Med. 2006;355:1233-1243.
5)Lee JW, et al. Expert Rev Clin Pharmacol. 2022;15:851-861.
6)Kulasekararaj AG, et al. Eur J Haematol. 2022;109:205-214.
7)Kulasekararaj A, et al. Hemasphere. 2022;6(Suppl):706-707.
8)Kulasekararaj AG, et al. Presented at: European Hematology Association (EHA) Hybrid Congress. 8-11 Jun 2023; Frankfurt, Germany. Abs PB2056.
9)Kulasekararaj AG, et al. Blood. 2019;133:540-549.
10)Lee JW, et al. Blood. 2019;133:530-539.
11)Roth A, et al. ECTH 2019. 2-4 Oct 2019; Glasgow, UK.
12)Lee JW, et al. Lancet Haematol. 2023;10:e955-e965.

(ケアネット 池田 里美)