ダークチョコレートの摂取と12種類の心血管疾患(CVD)のリスクとの間に因果関係があるかどうかをメンデルランダム化解析で検討した結果、ダークチョコレート摂取により本態性高血圧症のリスクが有意に低減した一方で、そのほかのCVDでは因果関係は認められなかったことを、中国・Shaoxing People's HospitalのJuntao Yang氏らが明らかにした。Scientific Reports誌2024年1月10日号掲載の報告。
ダークチョコレートには、フラバノールやメチルキサンチンなどの身体に有益とされる成分が豊富に含まれていて、小規模のランダム化比較試験では心血管系に良好な影響を与えたことが報告されている。しかし、ダークチョコレート摂取がCVDリスクと関連するかどうかは確立されていない。そこで研究グループは、ダークチョコレートの摂取とCVDリスクとの因果関係を調べるために、メンデルランダム化解析を実施した。
ダークチョコレートの摂取量に関するゲノムワイド関連研究(GWAS)のデータは英国バイオバンクより抽出した(6万4,945例)。CVDのデータは、冠動脈疾患(症例:18万1,522例、対照:98万4,168例)、心房細動(6万620例、97万216例)、心不全(4万7,309例、93万14例)、脳卒中(4万585例、40万6,111例)、本態性高血圧症(9万2,462例、26万5,626例)、非リウマチ性弁膜症(2万772例、28万6,109例)、非虚血性心筋症(9,926例、30万3,607例)、一過性脳虚血発作(1万8,398例、34万2,294例)、静脈血栓塞栓症(1万9,372例、35万7,905例)、心筋梗塞(2万4,185例、31万3,400例)、下肢の深部静脈血栓症(9,109例、32万4,121例)の研究から収集した。主なアプローチとして、逆分散加重(IVW)を用いた固定効果モデルを用い、感度分析によって結果の頑健性を評価した。
主な結果は以下のとおり。
●ダークチョコレートの摂取は、本態性高血圧症のリスク低減と有意に関連した(オッズ比[OR]=0.73、95%信頼区間[CI]:0.60~0.88、p=1.06×10-3)。
●静脈血栓塞栓症のリスク低減との関連も示唆されたが、因果関係はエビデンス不足のため立証できなかった(OR:0.69、95%CI:0.50~0.96、p=2.81×10-2)。
●ほかの10種類のCVDとの間に因果関係は認められなかった。
・心不全 OR:0.93、95%CI:0.63~1.35、p=0.69
・冠動脈疾患 OR:0.96、95%CI:0.78~1.17、p=0.65
・心筋梗塞 OR:0.78、95%CI:0.43~1.41、p=0.41
・心房細動 OR:1.14、95%CI:0.86~1.52、p=0.35
・非リウマチ性弁膜症 OR:0.81、95%CI:0.55~1.19、p=0.28
・非虚血性心筋症 OR:0.99、95%CI:0.63~1.57、p=0.98
・下肢深部静脈血栓症 OR:0.65、95%CI:0.41~1.04、p=7.26×10-2
・脳卒中 OR:1.26、95%CI:0.89~1.79、p=0.19
・虚血性脳卒中 OR:1.15、95%CI:0.72~1.83、p=0.55
・一過性脳虚血発作 OR:0.83、95%CI:0.55~1.24、p=0.36
これらの結果より、研究グループは「本研究はダークチョコレートの摂取と本態性高血圧症のリスク低下との間に因果関係があることを証明するものであり、本態性高血圧症の予防に重要な示唆を与えるものである」とまとめた。
(ケアネット 森 幸子)