小児期にがんを経験すると、その後の糖尿病の発症リスクが高くなることを示すデータが報告された。米セント・ジュード小児研究病院のStephanie Dixon氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Clinical Oncology」に12月13日掲載された。
小児がんサバイバーの糖代謝異常のリスクや、糖代謝異常に伴う心血管イベントおよび慢性腎臓病(CKD)のリスクは、これまでよく分かっていなかった。それを背景に実施されたこの研究から、小児期にがんの既往がある成人は既往がない人に比べて前糖尿病を発症する確率が2倍に上ることが明らかになった。Dixon氏は同院発のリリースの中で、「前糖尿病が20歳で始まった場合、それは心臓病や腎臓病のリスクが大きく上昇することを意味する。人生のより早期に前糖尿病になるほど、問題はより大きくなる。また、時間の経過とともに、より多くの小児がん既往者の耐糖能が悪化し続ける」と解説している。
この研究では、小児がんの診断から5年以上経過した成人3,529人〔年齢中央値30歳(四分位範囲18~65)〕と、小児がん既往のない対照群448人を年齢別に層別化した上で、前糖尿病(空腹時血糖値100~125mg/dLまたはHbA1c5.7~6.4%)、および糖尿病の有病率を比較検討した。また、前糖尿病から糖尿病への進行、および、心血管イベントやCKDなどのリスクを推定した。
解析の結果、対照群の前糖尿病有病率が18.1%(95%信頼区間14.5~21.6)、糖尿病有病率が4.7%(同2.7~6.6)であるのに対して、小児がんサバイバー群は同順に29.2%(27.7~30.7)、6.5%(5.7~7.3)だった。また、40歳代のサバイバー群の半数以上が糖代謝異常に該当した(前糖尿病が45.5%、糖尿病が14.0%)。前糖尿病者695人を5.1年(中央値)追跡したところ、10%に当たる68人が糖尿病に進行した。
Dixon氏は、「心血管疾患の危険因子の中で、糖尿病だけが統計的に有意なリスク上昇を示していた。さらに、前糖尿病者では合併症リスクが有意に増大し、糖尿病患者ではより顕著に増大していた」と述べている。同氏の指摘のうち後者に関して具体的には、糖代謝正常のサバイバーに比較して、前糖尿病者では心筋梗塞のリスクが2.4倍〔ハザード比(HR)2.4(1.2~4.8)〕、CKDのリスクが2.9倍〔HR2.9(1.04~8.15)〕であり、さらに糖尿病患者では心筋症リスクが3.8倍(HR3.8(1.4~10.5)〕、脳卒中リスクが3.4倍(HR3.4(1.3~8.9)〕であることが示されている。
一方でDixon氏は、前糖尿病や糖尿病は生活習慣次第で、その影響を抑制可能であることを指摘。その上で、「小児がんサバイバーに対して、糖代謝異常のリスクに対して早めに対処できるようにサポートする必要がある。そのために医師は、サバイバーがいつ前糖尿病を発症したかを特定し、糖尿病への進行抑止と経過観察の重要性をカウンセリングしなければならない」と強調。また同氏は、「小児期にがんを乗り越えた後に前糖尿病や糖尿病を発症した人たちが、より長く健康に人生を送ることができるようにするための介入法を検討すべきだ」との提言も付け加えている。
[2023年12月21日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら