統合失調症患者の認知機能改善にフルボキサミンは有効か?

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2012/10/12

 

 統合失調症の認知障害は、心理社会的パフォーマンスに少なからず影響を及ぼす。統合失調症患者における認知機能障害は、小胞体タンパク質であるσ-1受容体に関与しており、σ-1受容体アゴニスト作用を有するフルボキサミンが統合失調症の動物モデルや一部の統合失調症患者で認知機能障害の治療に有効であった例がいくつか報告されている。千葉大学の新津氏らは、統合失調症患者におけるフルボキサミン併用療法のプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験を行った。J Clin Psychopharmacol誌2012年10月号の報告。

 対象は、慢性期統合失調症患者48例。対象患者は8週間のフルボキサミン併用療法を行うフルボキサミン群(24例、150mg/日まで漸増)とプラセボ群24例に無作為に割り付け、12週間フォローアップを行った。主要評価項目の測定には、ケンブリッジ神経心理学テスト(CANTAB)を用い、視覚認知・ワーキングメモリー、注意力、実行機能の評価を行った。副次的評価項目は、PANSSスコア、SANSスコア、QOLスコア、MADRSスコアとした。

主な結果は以下のとおり。

・フルボキサミン併用療法の忍容性は良好であった。
・CANTABスコア、PANSSスコア、SANSスコア、QOLスコア、MADRSスコアに関する、時間×群の有意な交互作用は認められなかった。
・二次分析では、フルボキサミン群における空間認識に関わるワーキングメモリー(実行機能)の改善が示された。
・本試験では、統合失調症患者の認知機能改善に対するフルボキサミンの目立った効果は認められなかった。

関連医療ニュース
 ・認知機能への影響は抗精神病薬間で差があるか?
 ・日本人統合失調症患者の認知機能に影響を与える処方パターンとは
 ・初回エピソード統合失調症患者、長期予後予測に新基準!

(ケアネット 鷹野 敦夫)