慢性期統合失調症患者における陰性症状をどのように改善させるかは、今なお問題である。陰性症状にはセロトニン5-HT3受容体が関与することは知られている。Maryam Noroozian氏らは、慢性期統合失調症患者に対する5-HT3拮抗薬トロピセトロン(本疾患には未承認)の追加投与による陰性症状への有効性と忍容性を評価した。Psychopharmacology誌オンライン版2013年3月21日号の報告。
対象はリスペリドン投与により症状が安定している慢性期統合失調症患者40例。トロピセトロンまたはプラセボを無作為に追加投与し、8週間経過を観察した。精神症状はPANSSを用い、2週おきに評価した。錐体外路症状と抑うつ症状は副作用と同様に評価した。主要評価項目として、PANSS陰性症状スコア(8週目)のベースラインからの変化量を両群間で比較した。
主な結果は以下のとおり。
・トロピセトロン群はプラセボ群と比較してPANSS総スコア(F[1.860,70.699]=37.366、p<0.001)、陰性症状スコア(F[2.439,92.675]=16.623、p<0.001)、総合精神病理スコア(F[1.767,67.158]=4.602、p=0.017)の改善が認められたが、陽性症状スコア(F[1.348,51.218]=0.048、p=0.893)では改善が認められなかった。
・トロピセトロン群は有意な主要陰性症状の変化が認められた(重回帰分析:陽性症状コントロール、錐体外路症状、抑うつ症状にて調整、standardized β = -0.640)。
・副作用プロファイルは両群間で有意な差は認められなかった。
・慢性期統合失調症患者に対する5-HT3拮抗薬トロピセトロンの追加投与は、陰性症状改善に寄与すると考えられる。
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(ケアネット 鷹野 敦夫)