興奮を伴う急性期の精神疾患患者に対し、ベンゾジアゼピン系薬剤(BZD)の使用は一般的である。オーストラリア・カンバーランド病院のDonna Gillies氏らは、急性期精神疾患に対するBZDと抗精神病薬の有用性をCochrane Schizophrenia Groupレジストリ(2012年1月)に基づくレビューにて、比較検討した。その結果、BZD単独による効果は不良で、抗精神病薬との併用においても明確なアドバンテージがみられないことを報告した。結果を踏まえて、著者は「BZDをその他の薬剤に追加することによる明確なアドバンテージはみられず、むしろ不測の有害事象を起こす可能性がある。第一世代抗精神病薬を単独で使用することを正当化するのは難しく、本分野におけるより質の高い研究が望まれる」とまとめた。Cochrane Database of Systematic Reviewsオンライン版2013年4月30日発表の報告。
急性期精神疾患、とくに暴力行為あるいは激越を認める場合には緊急の薬理学的鎮静が求められ、いくつかの国ではBZD(単独または抗精神病薬との併用)がしばしば用いられている。本研究では、問題行動のコントロールおよび精神症状の軽減におけるBZDとプラセボ、またはBZDと抗精神病薬の効果を比較検討した。Cochrane Schizophrenia Groupレジストリ(2012年1月現在)を検索し、急性精神病患者を対象としBZD(単独または抗精神病薬との併用)と抗精神病薬(単独またはその他の抗精神病薬、BZD、抗ヒスタミン薬との併用)を比較したすべての無作為化臨床試験(RCTs)を抽出した。対となる変数のアウトカムに対しては、相対リスク(RR)と固定効果モデルによる95%信頼区間[CI]を算出した。連続変数のアウトカムに対しては、群間平均差(MD)を算出した。
主な結果は以下のとおり。
・臨床試験21件、1,968例について検討した。
・BZDとプラセボの比較試験(1件)で、中期(1~48時間)の「改善なし」のリスクはプラセボ群でより高かったが、大半のアウトカムは2群間で有意差を認めなかった(102例、1試験、RR:0.62、95%CI:0.40~0.97、エビデンスレベル:きわめて低い)。
・BZDと抗精神病薬の比較試験で、中期における「改善なし」の患者数に2群間で差はみられなかった(308例、5試験、RR:1.10、95%CI:0.85~1.42、エビデンスレベル:低)。しかし、BZD群では中期の錐体外路症状の出現が少なかった(536例、8試験、RR:0.15、95%CI:0.06~0.39、エビデンスレベル:中)。
・BZD+抗精神病薬とBZD単独の比較試験において、2群間に有意差は認められなかった。
・BZD+ハロペリドールとハロペリドール単独の比較試験において、中期の改善に差は認められなかったが(155例、3試験、RR:1.27、95%CI:0.94~1.70、エビデンスレベル:きわめて低い)、併用療法群でより大きな鎮静がみられた(172例、3試験、RR:1.75、95%CI:1.14~2.67、エビデンスレベル:きわめて低い)。ただし、併用療法群はオランザピン(60例、1試験、RR:25.00、95%CI:1.55~403.99、エビデンスレベル:きわめて低い)またはジプラシドン(60例、1試験、RR:4.00、95%CI:1.25~12.75、エビデンスレベル:きわめて低い、国内未承認)との比較では改善がみられなかった。
・ハロペリドール+ミダゾラムとオランザピンの比較では、改善、鎮静および行動において併用療法が優れるといういくつかのエビデンスが認められた。
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(ケアネット)