新規抗精神病薬は患者にどう評価されているか?

提供元:ケアネット

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公開日:2013/06/25

 

 ナダ・ハンバーリバー病院(トロント)のA. George Awad氏らは、新規抗精神病薬が統合失調症の患者報告アウトカムに及ぼす影響について31件の論文を基にレビューを行った。その結果、大半の新規抗精神病薬について患者報告アウトカムにおける好影響が認められたものの、それらは傾向にすぎなかったことから、患者の主観的評価による結果を統一化されたコア(unifying core)として確立していく必要性を示唆した。CNS Drugsオンライン版2013年6月12日号の掲載報告。

 本稿の意義について、著者は次のように述べている。すなわち「この20年間、患者の自己報告を考慮に入れた疾患マネジメントへの関心が高まっている。その背景には、過去数十年にわたる、消費者運動の高まりがある。こうしたなか、よりよい治療とアウトカム改善への明確な期待が伴う臨床現場での意思決定に際し、患者、介護者、および家族が、医師とより有意義な情報共有を図るべきという機運が高まっている。つまり、患者は医療サービスの消費者であり、ケアに対する満足度と同様、患者の意見や健康に対する感じ方をより把握すべきという認識である。新規抗精神病薬の開発と試験の過程における患者報告アウトカム(PRO)に対し、米国食品医薬品局(FDA)は、その他の規制当局と同様の関心を示すようになっており、このこともまた勢いを与える要素となっている。精神状態のマネジメントにおける意思決定の過程で患者を巻き込むことは、治療への積極的参加を促して“回復”の間口を広げることは明らかであり、統合失調症の治療成功が症状の改善だけでなく、機能の改善も含むというメッセージともなる。さらに、最近は個別治療が注目されており、これもまた患者を中心に据えた考え方が背景にある」という。

 新規抗精神病薬のQOLに及ぼす影響が報告された2004年以降、ジプラシドン(国内未承認)、アリピプラゾール、パリペリドン、アセナピン(国内未承認)、イロペリドン(国内未承認)およびルラシドン(国内未承認)などの、より新しい多くの抗精神病薬が導入された。そこでAwad AG氏らは、2004~2012年までに発表され、新規抗精神病薬がPROsにおける特定のドメイン、たとえば主観的忍容性、QOL、薬剤嗜好性、満足度、社会機能などを扱った文献の中から31件を選択し、レビューを行った。

 概要は以下のとおり。

・適用可能なデータの大半は、ジプラシドン、アリピプラゾールおよびパリペリドンに関するものであった。
・新規抗精神病薬のPROsへの良好な影響が非常に多くの試験で示されたが、いずれも傾向にすぎなかった。これは、試験デザインと方法論の限界が多く存在していたことによる。
・より厳格な試験が待たれる領域として、さまざまな主観的アウトカムの中に統一化されたコア(unifying core)が存在する可能性、また一人の主観的アウトカムとほかの人の主観的アウトカムから概括的に結論を導き出せるような傾向は特筆すべきである。
・主観的忍容性が良好な患者は、一般に満足度が高い傾向にあり、薬剤嗜好性が強い。
・このような統一化されたコアの特定は、適切な指標の開発のみならず、新規抗精神病薬の開発過程への情報提供と指南の一助となりうる。

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(ケアネット)