大うつ病性障害(MDD)の小児と思春期の若者に対し、SSRIの処方は、リスクよりもベネフィットが大きく上回ることが、スペイン・ナバラ大学のCesar Soutullo氏らによるレビューの結果、示された。Current Psychiatry Reports誌2013年7月15日号の掲載報告。
小児と思春期若者のMDDは公衆衛生上の問題であり、エビデンスベースの治療が必要とされる。Soutullo氏らは、小児・思春期MDDの抗うつ薬(とくにSSRI)治療の安全性と有効性について、PubMed検索により入手可能であった研究報告および短報サマリーについてレビューを行った。
主な結果は以下のとおり。
・抗うつ薬の有効性について評価していた試験が、少なくとも19件存在した。15件は対プラセボ試験、4件は非SSRI(新しい世代の抗うつ薬)との比較試験であった。被験者は小児・思春期合わせて3,335例であった。
・15試験についてSSRIの種類別にみると、フルオキセチン(国内未発売)5件、エスシタロプラム2件、セルトラリン2件、シタロプラム(国内未発売)2件、パロキセチン4件であった。
・レビューの結果、小児・思春期MDDの治療において、フルオキセチンとエスシタロプラムは、いずれも安全であり、症状改善および寛解/反応率について有効であった。しかしながらその反応率は、非OCD不安障害(強迫性障害ではない不安障害)の治療に対するよりも低かった。
・セルトラリンも、1試験(2試験からプールされた結果を解析した)において有効性が示された。
・MDDの治療必要数(NNT)は10例であった。一方、自殺傾向の有害必要数(NNH)は112例であった。
・研究方法についての主な限界は、プラセボ反応率が高率であること、試験場所が複数であること、患者がより若く、MDD重症度がより低いことであった。
・治療は、再発防止のため、寛解後約1年は継続すべきであることが示された。
・FDA承認のフルオキセチンとエスシタロプラムは、小児MDDの治療において安全性と有効性が認められた。セルトラリンも、有効性と安全性を支持するデータが一部において認められるが、FDAの承認は得られていなかった。
・以上のことから著者は、「臨床医は、一部の患者においてごくわずかな自殺念慮の増加があることを知っておかなくてはならない。しかし、中等度~重度MDDにおけるSSRI使用のリスク対ベネフィットの比率は1対11.2と良好である」と結論している。
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