せん妄治療に用いられる抗精神病薬。せん妄治療に対する有用性・安全性において、定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬で違いはないのであろうか。この問題に対し、韓国・延世大学のHyung-Jun Yoon氏らは、6日間の前向き比較観察研究により検討を行った。BMC Psychiatry誌オンライン版2013年9月30日号の掲載報告。
先行研究において大半の報告で、せん妄治療における抗精神病薬に関して定型または非定型の間に有意差はないことが示されていた。一方で、高年齢が同治療反応不良の予測因子である可能性も示唆されていた。そこで研究グループは、せん妄治療について患者の年齢を考慮に入れ、ハロペリドールと3つの非定型抗精神病薬[リスペリドン、オランザピン、クエチアピン]の有効性と安全性を比較することを目的とする試験を行った。試験は、6日間の前向き比較臨床観察研究で、韓国の高度機能病院で行われた。被験者は、せん妄治療に対して精神医学的な診察-リエゾンサービスを紹介され、試験登録前にスクリーニングを受けた80例であった。有効性の評価は、韓国版Delirium Rating Scale-Revised-98(DRS-K)と韓国版Mini Mental Status Examination(K-MMSE)を用いて行われた。安全性の評価は、Udvalg Kliniske Undersogelser副作用スケールにて行った。
主な結果は以下のとおり。
・被験者80例は、ハロペリドール群23例、リスペリドン群21例、オランザピン群18例、クエチアピン群18例に割り付けられた。
・ベースライン時において4群間に、平均DRS-Kでみた重症度スコアとK-MMSEスコアに有意差はみられなかった。
・4群とも試験期間中、DRS-K重症度スコアは有意に低下し、K-MMSEスコアは有意に上昇した。一方で4群間に、DRS-KおよびK-MMSEスコアの改善について有意な差はみられなかった。
・同様に、DRS-Kの認知および非認知のサブスケールスコアも、治療群を問わず低下が認められた。
・治療反応率は、75歳未満よりも75歳以上の患者において低値であった。とくに、オランザピンの治療反応率は患者が高齢であるほどより低値であった。
・被験者合計15例(18.8%)が、いくつかの有害イベントを経験した。イベントに関して、4群間で有意差はみられなかった。
・以上のように、ハロペリドールとリスペリドン、オランザピン、クエチアピンは、せん妄治療に関する有効性と安全性は同等であった。一方で、せん妄治療における抗精神病薬の選択において、考慮すべき因子は年齢であることが示された。
関連医療ニュース
高齢者のせん妄に対する抗精神病薬のリスクは?
抗精神病薬は“せん妄”の予防に有用か?
がん患者のせん妄治療に有効な抗精神病薬は…
(ケアネット)