未治療のC型肝炎ウイルス(HCV)ジェノタイプI型感染患者では、標準治療であるペグインターフェロンα-2b(商品名:ペグイントロン)+リバビリン(同:レベトール、コペガス)による導入療法後にboceprevirを追加する治療法が、標準治療単独に比べ持続的ウイルス陰性化率(SVR)を約2倍にまで改善することが、アメリカ・インディアナ大学医学校のPaul Y Kwo氏らが実施した無作為化第II相試験(SPRINT-1試験)で示された。標準治療は免疫系を刺激することで非特異的にウイルスの複製を抑制するもので、SVRは50%以下にすぎない。NS3プロテアーゼ阻害薬であるboceprevirはウイルス複製に重要な蛋白を阻害する「直接作用的抗ウイルス薬」と呼ばれる薬剤の一つであり、標準治療による導入療法の薬剤血中濃度が最適化された時点でこれを追加併用投与するアプローチの有用性に期待が集まっているという。Lancet誌2010年8月28日号(オンライン版2010年8月9日号)掲載の報告。
boceprevirの4種類の投与法を標準治療と比較、低用量リバビリンも評価
SPRINT-1試験の研究グループは、C型慢性肝炎に対する標準治療であるペグインターフェロンα-2b+リバビリン併用療法と、これにboceprevirを追加する治療法の有効性を比較する無作為化第II相試験を行った。試験にはアメリカ、カナダ、ヨーロッパの67施設から未治療のHCVジェノタイプ1感染患者595例が登録され、二つのパートに分けて実施された。
パート1(520例)では、ペグインターフェロンα-2b 1.5μg/kg+リバビリン800~1,400mg/日を48週投与する群(PR48群:104例)を対照とし、同様の治療を4週施行後にboceprevir 800mg×3回/日を追加して24週投与する群(PR4/PRB24群:103例)あるいは44週投与する群(PR4/PRB44群:103例)、ペグインターフェロンα-2b 1.5μg/kg+リバビリン800~1,400mg/日+boceprevir 800mg×3回/日を28週投与する群(PRB28群:107例)あるいは48週投与する群(PRB48群:103例)の全5群に無作為に割り付けられた。
パート2(75例)では、PRB48群(16例)あるいはリバビリンを400~1,000mgに減量した低用量PRB48群(59例)に無作為に割り付けられた。
いずれのパートも、治療割り付け情報は試験関係者と患者に知らされた。主要評価項目は、治療終了後24週における持続的ウイルス陰性化率(sustained virological response:SVR、HCV RNA非検出例の割合)とした。
対照群38%、PRB28群54%、PR4/PRB24群56%、PRB48群67%、PR4/PRB44群75%
4つのboceprevir追加群は、いずれも対照群に比べSVRが有意に優れていた。すなわち、対照群(PR48群)のSVRが38%(39/104例、95%信頼区間:28~48%)であったのに対し、PRB28群は54%(58/107例、同:44~64%、p=0.013)、PR4/PRB24群は56%(58/103例、同:46~66%、p=0.005)、PRB48群は67%(69/103例、同:57~76%、p<0.0001)、PR4/PRB44群は75%(77/103例、同:65~83%、p<0.0001)であった。
リバビリンを減量した低用量PRB48群では、ウイルス再燃(viral breakthrough、HCV RNAが最低値から≧2 log10上昇あるいは≧50,000IU/mL上昇)の割合が27%(16/59例)と高率であった。低用量PRB48群の再発(治療終了時にHCV RNA非検出で、24週のフォローアップ後に検出された例)の割合は22%(6/27例)であり、対照群の24%(12/51例)と同等であった。
boceprevir追加群は、対照群に比べ貧血[55%(227/416例) vs. 34%(35/104例)]、味覚障害[27%(111/416例) vs. 9%(9/104例)]が多くみられた。
著者は、「未治療のHCVジェノタイプ1感染患者においては、標準治療であるペグインターフェロンα-2b+リバビリンによる4週の導入療法後にboceprevirを追加する治療法が、標準治療単独に比べSVRを約2倍にまで改善する可能性が示唆される」と結論している。
(菅野守:医学ライター)