結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞星状細胞腫の治療として、哺乳類ラパマイシン標的蛋白(mTOR)阻害薬であるエベロリムス(商品名:免疫抑制薬としてサーティカン、抗悪性腫瘍薬としてアフィニトール)の経口投与療法が、標準療法である手術療法(脳神経外科的切除)に代わる治療選択肢となり得ることが示唆された。米国シンシナティ小児医療センターのDarcy A. Krueger氏らによる、前向きオープンラベル試験による。上衣下巨細胞星状細胞腫の手術療法では、周術期のリスクを伴うこと、また深部腫瘍の切除が困難で再発の要因ともなることから、有効な治療法が模索されている。NEJM誌2010年11月4日号掲載の報告より。
投与6ヵ月後、細胞腫量が有意に減少
研究グループは、上衣下巨細胞星状細胞腫の継続的増殖がみられる3歳以上の患児28例を対象に、トラフ濃度5~15ng/mL達成を目指して、体表面積1平方メートルにつき3.0mgのエベロリムスを経口投与し追跡した。
有効性の主要エンドポイントは、細胞腫量の、ベースラインと6ヵ月後との変化とした。
独立した中央レビューによる評価の結果、エベロリムス療法群の原発性上衣下巨細胞星状細胞腫量について、臨床的に有意な減少が認められた(ベースライン対6ヵ月後のP<0.001)。21例(75%)が30%以上減少、そのうち9例(32%)は50%以上減少した。顕著な減少は3ヵ月以内に起きており、その後維持されていた。
また、新たな病変、水頭症の悪化、頭蓋内圧亢進の所見は認められず、上衣下巨細胞星状細胞腫に対する手術療法または他の治療が必要になることもなかった。
てんかん発作の減少も認められる
24時間ビデオ脳波データが入手できた16例では、試験期間中のてんかん発作頻度が、試験開始前6ヵ月間と比較して、9例で減少したことが認められた。その他は6例が変化なし、増加は1例だった(てんかん発作回数の変化の中央値:-1、P=0.02)。
妥当性が検証された小児てんかんQOL調査票における平均(±SD)スコア(0~100で示され、高いスコアほどQOLがより良好)は、3ヵ月時点スコアが63.4±12.4、6ヵ月時点が62.1±14.2で、ベースラインの57.8±14.0より改善していた。
エベロリムス治療に関連したグレード3の有害事象は、副鼻腔炎、肺炎、ウイルス性気管支炎、歯性感染症、口内炎、白血球減少症がそれぞれ1例報告された。
これらの結果から研究グループは、エベロリムス経口投与療法が上衣下巨細胞星状細胞腫量の顕著な減少、ならびにてんかん発作頻度の減少と関連しており、長期間の研究が必要であるとしつつ、症例によっては手術療法に代わる治療選択肢となる可能性を示唆した。
(朝田哲明:医療ライター)